20.一年のはじまりは香りから...香りは邪気をはらいます 中医学との出会い①

コラムをお読みいただき、ありがとうございます。

ボンジュール50‘sにコラムをはじめて掲載させていただいたのは6年半前、前回のno.19を掲載してから3年半ほど経過しました。その間、家族帯同に伴い上海で生活をしておりました。上海に住むことはまったくの想定外でしたが、アロマセラピーを始めた当初から独学で少しずつ学んでいた中国伝統医学(中医学Traditional Chinese Medicine=TCM)に現地で触れられたことは何よりの収穫でした。

TCMは心身一如、からだと心をひとつの宇宙としてとらえます。アロマセラピーもホリスティック(全体的)であることが基本にあります。本題アロマを再開する前に、少しだけそのあたりのお話をしたいと思います。

上海にわたってほどなく、必要以上に体重が落ち体調が悪い日が続いたことがありました。現地のクリニックではじめての針治療を受け、漢方薬※1を処方されました。

今、からだはどういう状態なのか、どんなケアがよいのか、何に気を付ければいいのか、臨床経験の豊富な中医師がしっかりと診察・治療をしてくれました。今は血液検査も一緒にやってもらえるところもあるので、客観的な診断をしてくます。診察、治療が完全に自分だけにカスタマイズされているという点は、大きな安堵感をもたらしました。

からだは唯一無二のもの、同じような症状でも病気は異なることがあるし、同じ症状でも病気が異なることがある-- 病の現れ方は人それぞれです。中医師は症状のみにとどまらず精神状態、関わる身体症状についてよく目をこらし、じっくり聞きます。心身が少し弱っているときには、専門家に「聞いてもらう」ということも大きな治療につながるのだと、その後徐々に回復していった私はひとり大きくうなずいたものです。自分のこのような経験から、中医学※2をしっかりと本場で学びたいという念にかられ、学びを始めました。そのホリスティックで系統的な学問に感銘を受け、現在も日本で勉強を続けている日々です。

さて、年明けの初詣。私は近所の弁財天さまにも行ってきました。

ふとそこで見つけたものがとても興味深いものでした。いわく;香りの十徳。黄庭堅という北宋時代の詩人が書いたものだそうです。十徳の一部には、こんなことが書かれています。

清浄心身(心身を清浄にする)

能覚睡眠(よく睡眠をさます)

能除汚穢(けがれを取り除く)

静中成友(香りが友となり孤独感を癒す)

感格鬼神(感は鬼神に格(まさ)る;感覚を研ぎ澄ます)

これは基本的には仏教で使われるお香、線香のことなのですが、香りについてはTCMでも同様です。香りのよいものは邪気を払い、正気(邪気と対峙するもの)を支えてくれるのです。

ここでいう邪気は、スピリチュアルな意味(たとえば悪霊など)とは異なり、病気の原因になることを指しています。もちろん精神衛生上よくないことも含まれるとは思いますが、基本はウイルス、細菌など流感、不衛生なことであり、正気もまた同様で、心身の免疫力のようなものです。

ここで(やっと)アロマセラピー;精油の登場です。年明けに新たな気持ちでスタートを切るためにも、ご自身と周囲の空気を一新してみてはいかがでしょうか。今回のおすすめは、ユズ、グレープフルーツです。

本記事の内容から仏教に関連したサンダルウッド(白檀;呼吸器系、気管支炎、泌尿器系の炎症なども鎮静します)をお勧めしたいところですが、鎮静作用の強いサンダルウッドでは、その作用が強く出てしまう可能性があり、少し沈んでいる方には合いません。

忙しなく、飲食過剰になったお正月にたまったものを排出を促進するためにも、リフレッシュ・浄化作用のあるユズ精油※3はよい活性の役割を果たしてくれると思います。また抗菌作用も強く、「風の邪気」=風邪や流感が増発する冬場には重宝します。

身土不二の考えに寄り添うと、日本原産のユズはとくにおすすめです。

精油を入れる機能のある加湿器に入れる、マグカップに湯を注いでのどを潤すなどをして流感にかかる前に、アロマで積極的な防御対策を。(ない場合はベルガモット、グレープフルーツでも代用できますよ)ユズ湯でゆったりするのもいいですね。 アロマセラピーを通じて、皆様の笑顔がさらに美しいものとなりますように。本年もよろしくお願いいたします。

※ 1.実際には中医薬。

※ 2.中医学はすでに飛鳥時代に伝来して日本で根付き、漢方として日本独自の進歩をしました。室町から江戸にかけて独自の発展を遂げた漢方は、西洋医学である「蘭方」と区別するために「漢方」との呼称があります。TCMと漢方は土台は同じでも、発展の過程で異なるものとなっています。

※ 3.柑橘系の精油は希釈をしても日光にあたるとかぶれたりすることがあります。

 

 

2018.1.29