21.からだとこころを温める精油-スパイス系 アロマセラピーと中医学との出会い②

世界各地で異常な寒波、今年の寒さは本当に身に応えます。からだを温めていると体調がいいと感じている方も多いと思います。冷えると痛みが増し、筋肉もかたくなります。縮こまって、さらにまたからだが熱を産生しづらい環境になるという負のスパイラル。

そんなときにもアロマセラピー。「温める」精油があります。スパイス系の精油たちです。

カルダモン、実を乾燥させて水蒸気蒸留したものが精油になります。
カルダモン、実を乾燥させて水蒸気蒸留したものが精油になります。

たとえばクローブやジンジャー、カルダモン、ブラックペッパー、コリアンダーなど。精油として大変作用が強く、そのぶん皮膚などへの刺激も強いのが特徴です。スパイスそのものとして利用されるときには消化促進、胃腸のトラブルに有効と言われるこれらの精油ですが、精油になるとさらにその威力も大きくなります(殺菌作用や強壮作用、催淫作用など多岐にわたります)。強い精油なので単体ではなくブレンドをしてご使用されることをおすすめします。

オレンジやマンダリン、レモンなどの柑橘系ととても相性がよい香りです。植物油で1%程度※に希釈して角質層の厚い足裏、てのひらへのマッサージ、足浴として桶にはったお湯に1,2滴がおすすめです。消化促進作用もあることから、結果的にダイエットにつながる可能性もあります。 また、これらの精油は体だけでなく「心の冷え」も温めてくれるのがうれしいところです。かたまった感情、冷たくなった気持ちを温かくして流してくれる作用がスパイス系精油にはあるのです。

さて前回の続きになりますが、私の中医学の出会いについてのお話を少しばかり。

アロマセラピストになるための勉強中、独学で東洋医学を勉強し始めました。15年以上前のことです。心身へのアプローチという点から、系統だった理論に基づいて治療が行われている東洋医学にとても魅力を感じました。今考えるとそれは日本「漢方」だったので、中国伝統医学(TCM=Traditional Chinese Medicine)とは少々異なっていますし、なにぶん独学。

でも、まさかそのあと中国で暮らす機会があるとは思いもよらないことでしたが。

上海上陸後すぐに体調不良となり、そこから通いはじめたのが中医クリニックでした(日系クリニックです)。3つのクリニック、5名の中医師に出会いました。中医師はとにかくよく患者の話を聞くというのが第一印象。治療は鍼、または鍼と按摩。クリニックによって異なるようです。鍼は医師が打ち、鍼の太さ、長さ、打った時の反応を見てから次の経穴(ツボ)の部位へ。按摩は専門の資格をとった人が施術をします。鍼も按摩も日本のものに比べたらだいぶパワフルかもしれません。薬の処方も細かく、症状が強いころは1,2週間ごとに処方が違っていました。中医師の処方に基づいて、顆粒の方剤の場合はその場で処方、液状のものは専門の薬局で作ってから翌日クール便で家に届く「生もの」。原因がはっきりしない不調の「私のためだけにこの薬がある」ということは、やはり心強く魅力的でした。

やはり中医学を学びたい。実体験を通してさらにその思いが募ったわけです。

そして同時期に、心を癒してくれたのが秋口咲いていたギンモクセイ。キンモクセイと違って白い花が放つ香りは、ほのかな甘みのあるやわらかなものです。初めての土地で大小いろいろなトラブルに見舞われて弱っていた気持ちを、ふわっと包みこんでくれる。ただでさえメランコリックになりがちの秋、香りにどれだけ救われたでしょうか。香りをかいで泣いたことは初めてでした。いい香りを思い切りかぎたくて、深く吸い込む。すると自然にゆっくりと長く息を吐きだすことができる。そうやって深呼吸ができると、体調も気持ちの持ち方も変化していきます。ストレス時には無意識のうちに浅い呼吸を繰り返し、さらに体調を下げる原因にもなります。私にとってギンモクセイはまさに屋外アロマ、ストレスに気持ちを奪われていた自分を、香りが励ましてくれた感じです。アロマセラピストという香りに関連した仕事ができることを、とてもありがたく思ったものです。

TCMの観点から精油の作用を選ぶ、あるいは精油の香りからTCMケアでサポートを考える、などいろいろなフェイズで活用できるようなものを今後コラムでもご紹介できたらと思います。

 

※ 1%の希釈・・・10mlの植物油だとした場合、精油(小瓶)を2滴

 

2018.2.19