モノにこだわる。

Lesson 8 : 女性思いのアンティ-ク家具

私たち女性は、なぜアンティ-ク家具に愛着を感じるのか!? それはただ歴史によるノスタルジーだけでなく、欧米に深く根付くレディファーストの精神を思い出さずにはいられません。女性を尊重して作られているからこそ、女性に人気があって当然なのですが、女性の好み、使い勝手などが吟味され、おそらく、上流階級の女性だけではなく一般の女性でも専用の家具というものが使われていたのではないでしょうか。今回は19世紀から20世紀初頭に造られた女性用の家具を2点ご紹介します。

■芸術を楽しむ余裕

アンティ-ク家具の特徴のひとつは贅沢に施された装飾で、寄木細工やブロンズ製の金具の装飾や彫刻など多種多様です。それぞれにプライベートな楽しみ方があったに違いないのですが、腕の良い職人達が競い合っていた時代を垣間見ることができます。実用的な家具の中にも、怠らず施された装飾は現代人にとっては宝石に匹敵する代物。猫足と呼ばれる脚部の曲木や彫刻などを見ても職人が一本一本、大事に抱え上げ頬ずりをしながら仕上げている光景が目に浮かぶようですよね。

■女性の威厳!?

右の写真は女性専用のレディスデスク。日本人の感覚から言うと18~19世紀の時代にそんなものがあるなんて贅沢としか言いようがありません。日本では女性用家具は姿見などの鏡や化粧箱くらいしかなかった時代。西洋では女性の地位、価値観、教育や文化などが認められ受け入れられていたという証拠です。ライティングビューローという言い方もありますが、ビューローという名称はフランスで書き物をするときに、テーブルの上にビュ-ル地(ウール)の布を掛けたことに由来しています。

■曲木のバルーンバックチェア

この写真のような線の細いつくりのイスには、おそらく男性は座れないでしょう。現代の女性でも少々ためらうほど華奢な作り。スソの広がったドレスを着ていた時代なら、この椅子はすっぽり隠れてしまっていたに違いない、女性専用のイスです。背もたれ部分の丸さ加減も上品で、反り具合も見事としか言いようがありません。ちょこっと掛けにふさわしく、手軽で重宝、女性に愛された人気のイスだったことがうかがえますね。

 

■控え目で上品な和文化との共通点

日本家具の歴史もまんざらではないと思っています。古い和家具のファンも多いはず。ジャパニーズアンティ-クとして外国にも人気があり、異国のものに憧れるのは万国共通ですよね。人気なモノのひとつに、寄木細工があります。家具に寄木細工を施す手法の歴史は定かではありませんが、西洋や中国から18~19世紀頃に日本に渡って来たと考えられ、日本文化にすんなり受け入れられました。細工の緻密さや手法が日本人向きだったのか?その控え目で他を退けることなく、でもしっかり主張して上品なところが何とも日本文化らしく私は好きです☆

写真の引き出しだけのタンスは和家具ではありませんが、真ん中にクルミ材の寄木の装飾が施され、可愛らしい女性用のキャビネットです。もし、これが江戸時代、お屋敷の和室にぽつんとひとつ置いてあっても違和感なく絵になるのではないでしょうか。


いろんなことに思いを馳せながらタイムスリップするのは何とも楽しいものですよね。アンティ-ク家具は私にとって、瞬時にして歴史や世界を駆け巡らせてくれるタイムマシーンなのです♪

 

2011.9.10