ああ、眠りにおちてゆく!

春は私の睡眠環境にとって、厄介な季節である。

 

わが家は、けっこう管理の厳しいマンション暮らしなので、ベランダの外側にフトンを干すことができない。1センチでもフトンがはみ出そうものなら、管理人のおじさんが飛んで来て苦情をいわれてしまう。この季節は天気のよい日には花粉が飛散するので、短時間だけ外に広げて干したいのだが、それがままならないのだ。

 

仕方がないので、私のフトンは部屋の中で椅子の背にかけて干しているのだが、ガラス越しの日射しでは、春の不順な天候だと干している意味がほとんどない。じつは、私はフローリングの上にフトンを敷いて寝ているものだから、フトンがペッタンコになると背骨や尾てい骨がちょっと辛くなる。ほんとうは、お日様に干されたフカフカのフトンで毎日眠りにつきたいところなのだ。

 

バタンパタンとたたんで仕舞えるフトンの身軽さが好きなので、ベッドを買う気にはまだなれない。ライフスタイルのどこかに、遊牧民のような身軽さを持っておきたいという思いが根強くあるのだが、そんなことをいっている年齢ではもうないのだろうか?

 

布団乾燥器

そんな話を、実家に行った際に姉にすると、「フトン乾燥機、買えばいいじゃないの!」といとも簡単にいわれたのだ。姉がいうには、フトン乾燥機ほどコストパフォーマンスの優れた家電はないのだとか。「使ってみなさいよ、便利よ〜!」と太鼓判を押されたので、帰り道に家電量販店へ寄ってさっそく購入した。私が買った日立のフトン乾燥機は、洗濯物を乾かすためのカバー付きで6870円だった。洗濯物カバーが付かないものなら6000円弱で買えるわけだ。

 

私は、2枚の羊毛布団を敷き、2枚の羽毛布団と毛布を掛け、羽毛枕を使って寝ているのだが、寝る時刻に合わせてフトン乾燥機をセットするだけで、そのすべてがフカフカに膨らんで、ホカホカに温まる。「フトン乾燥機」というからには、それはあたりまえのことなのだが、掛け布団と敷き布団が同時に仕上がるのがうれしい。おまけに枕は風船のようにパンパンに膨れているのだ!

 

この乾燥したてのホッカホカの掛け布団と敷き布団の間に、カラダを滑り込ませたときのよろこびは、喜びを通り越してまさに「歓び」という感じだった。

次の日、姉にそのことを報告すると「カラダの凝りが一瞬でとれる勢いでしょ!」といわれた。

 

そうなんです。フトンに入ったとたんにカラダがまるで羽のように軽くなって、そのまま引き込まれるように眠りにおちていく感じは、なにものにも代えがたい快感なのですよ。ああ、今夜もフトン乾燥しちゃおうかな!

 

 

2012.4.2