至福の『ふく』は、オトナのあじわい

ふぐ料理

少し前のことだが九月のある日、新幹線に乗って名古屋に「ふく(ふぐ)」を食べに行った。なぜ九月? それも名古屋に? と疑問を持たれる方は多いと思う。「ふぐ」と言えば「冬の下関」に相場は決まっている、と私も思っていたのだが、その本場下関にも名古屋近辺の港で水揚げされたふぐがけっこう空輸されているらしく、名古屋はどうもふぐ料理の穴場らしい、と長らく中部地方に住む友人も今まで知らなかった新情報を教えてくれた。

 

また、シーズン中は「天然」を謳っていても、足りなくなれば養殖モノが混ざることもあるようだが、九月に店で出されるふぐは漁師の網に他の魚と一緒にたまたまかかった、紛れもない天然モノだ。それをシーズン前のお値打ち価格で食べさせてくれる店が名古屋に一軒だけあるというのだ。

 

実は私は、ふぐをあまり食べたことがない。なぜかというと、「ふぐ」などというものはオトナの、それもかなり枯れたオトナの上等な食べ物だと思っていたので、老後の楽しみにとってあったのだ。TVで若いタレントたちが大口を開けて「ふぐ刺し」をほおばる姿を見るにつけ、「十年どころか百年早い!」と苦々しく思う今日この頃である。

 

その老後の楽しみを返上して、名古屋一の「ふく料理」の老舗「可ん寅」へ。

ふぐ料理

前菜、ふく刺、ふく皮、ふく寿司、ふく醤油焼き、ふく唐揚げ、ふく鍋、雑炊、香物、水物のコース料理が、三割引きの九月限定謝恩価格で食べられた。天然寅ふぐならではのお刺身のプリッとした食感は最高の味わいだったが、生醤油で香ばしく焼かれた醤油焼きも絶品だった。

高層ビル

ふぐは味がしっかりしているのにクセがないので、いくら食べても飽きることがないそうだ。一緒に行った食通の友人などは「毎日でも食べられる」といっていたが、確かにそうだろうと思った。しかも低脂肪、低カロリーなのでカラダにやさしく、うれしいことにコラーゲンの宝庫なのです! これぞオトナの女性のための、高級なお食事ではありませんか。

 

若者は「ふく」を食べる資格などありません。五十歳を過ぎたころから、その資格は備わるのです。

 

2010.11.17