辛子レンコンは旨い!

ある夜、以前から一度入ってみたいと思っていた酒場へ友人を案内したが、あいにくその日は休みだった。聞けば、友人もその店のことが気になっていたという。駅前から住宅地への入り口にある九州の料理と酒を出すその店は、いつ通っても活気に溢れ、旨いものが必ずありそうな匂いがしていた。

 

数日後にめでたく入店した私と友人は、本日のおすすめの「ミミガーときゅうりのあえもの」と焼酎を注文し、壁にずらりと貼られた品書きを見て、二人同時に「辛子レンコン!」と叫んだ。熊本出身の父の親類から送られてきた「辛子レンコン」を私は子供のころに一回食べたことがあった。辛くて、粉っぽく、たいして美味しいものではなかった。ましてや兵庫県出身の友人は、私よりも「辛子レンコン」に縁もゆかりもないハズなのだ。しかし、「この店の辛子レンコンは旨いに決まっている」と品書きを見た瞬間、なぜか二人の脳裏に閃いたのだ。

 

二人の予想はみごとに当たり、その店の「辛子レンコン」は旨かった。食べ物の趣味が妙に合致する私と友人は、ラストオーダーの声がかかると二皿目の「辛子レンコン」をたのんでしまった。すると、今度は揚げたての「辛子レンコン」が出されたのだ。多分、作り置きのものが切れてしまったので、急遽揚げてくれたのだろう。この、揚げたての「辛子レンコン」が旨かった!聞くところによると、「辛子レンコン」は揚げたてを食べるものではないそうだが、「熱いものは熱いうちに」は料理の基本。揚げ物なんだから、揚げたてが美味しいのは当たり前ではないか。「ほかほか、カリッ!」と揚げたての「辛子レンコン」は、絶妙な美味しさで芋焼酎によく合った。

れんこん 揚げ

そのときから、「辛子レンコンを自分で作って、揚げたてを食べよう!」という私の野望がめらめらと広がった。図書館へ行って「辛子レンコン」を検索したが、出てこない。「九州の郷土料理」で検索しても駄目だった。しかしここで諦めるわけにはいかないと、図書館奥にある相談コーナーに行き、書庫から何冊か出してもらった。
本によると、「辛子レンコン」は滋養強壮効果のあるレンコンをたくさん食べられるように、滋養と刺激のある辛子を更に詰めた料理だそうだ。オクラや山芋のように糸をひく野菜は滋養強壮の効果があるのだから、レンコンも同様なのだろう。滋養強壮というと男性的だが、要はアンチエイジングに有効ということだ。
友人を呼んで、自家製の「辛子レンコン」を二人で食べた。「辛い!」と友人は涙を流しながら食べていた。次回は辛子を減らして、ソラマメの粉を増やしてみよう。
これからの梅雨のジメジメした気候には、鼻にツーンと来るあの「辛子レンコン」の刺激がたまらなくなりそう。揚げたての「辛子レンコン」を涙を流しながらほおばり、芋焼酎のロックを飲むのです!

 

2010.6.21