初夏のシャツに想う

初夏のシャツにテーマをすえた、ファッションフォトの収集は、スピーディかつ楽しいひと時だった。しかし、それにまつわる言葉や解説文が、全く浮かんでこない。このコラムをアップするまでに、編集の方は痺れをきらされた、、、を超えたおもいをされたに違いない。

すこし前、多分40代までは、シャツ…を美しく素敵に着こなすことへの憧れや、着こなせてこそオトナのあかし！などの幻想を強く描いていた。

しかし実際、自身がその年齢を迎えてシャツを着る…という行為に、それまでの思いとはかなり距離があることにあらためて気づかされ、こんなにも筆が重くなってしまったのだ。

シャツに限らずファッションに対する思いがそれまでとは少し変わったと言えるからだろう。 美しく見てもらいたい、着ていてここちよく気分も上がる…云々を超えた"着る"という行為に対する心は、50'sの女性たちにとって、次にくる世代とはまた異なった、装いにおいて、現実感の強い"気"がはいる年代ではなかろうか…とおもう。

家庭においても、社会においても、影となっていようが、表だっていようが 、中心的な位置にあって、衣は身体の一部としての主張ではなく私自身であってほしい。他と同化するのではなく、私らしくいられるという意味で。どう見られたいかではなく、他によい影響(良い印象を受けるではなく)を与えられればなおのこと良いと願う。内面が反映されながらも、着ていることを意識しないでいさせてくれる衣は、それぞれの価値観に寄り添うものとして、色々な意味で高い水準が要求される。

こんな風に"着る"ということについて、あらためて考えさせられた、このシャツというアイテム。女性には、紳士服にはないブラウスという形も含め、ファッションの大事な基本アイテムだといえる。

下着の次に身体に近い、シャツの素材やカッティングの重要性は今さら語る必要もない。

張り感や凹凸の位置がそれまでとは違うこの世代が着るシャツは、自分自身はもちろん、まわりをも優しく包み込む包容力としなやかさ、力強い安心感を持っていて欲しい。

2016.6.10