シードル・ヴィネガーで美人になれそう!! 〜流行の気配 "リンゴ酒酢"〜

「食」に一家言あって、そのくせ保守的なフランスにやっとバルサミコ酢が定着しはじめた。一過性の流行ムードを拒否する傾向のフランス人の台所にイタリア酢が入り込めたのは、味の違いが好まれる様になった証拠だ。だが、何と言っても、TVで数多い料理番組中にシェフ達が使って見せるからだろう。最近はもう、料理番組で、まな板と包丁で野菜を刻む場面ばかりだが、昔はナイフを空中で使って野菜を切っていた。私が初めて義母の家の台所に立った折り、まな板を探し、果物切りに使うようなナイフしかなく、「これで野菜を切るの?」と、とまどった経験がある。当時、日本包丁のような形態のものは売っていなかった。以来、フランス人を前に、まな板の上で包丁を使ってキュウリを刻んでみせるのは、私の得意芸だ。笑う事なかれ! 私のそれは、日本人の標準以上ではないにもかかわらず、その早さと薄切りに本当に皆歓声をあげるのですよ!! 


大体、フランス主婦の野菜を切るのろさ加減は、日本人主婦の倍の時間を要する。不器用ですよ!!と思っていたが、料理人が考えだしてくれた日本の「道具」と慣れのお陰なのです。その証拠に、フランス人も手芸は上手にするのだから。というわけだが、友人は最近出回り始めたセラミックの包丁を買って、「手にいれたのよ」と嬉しそうにする。近頃はスーパーでさえ、日本風形態の台所用包丁を売るようになった。フランス人シェフ達が東京にレストランを出店して、日本の良いものを取り入れて紹介するからだろう。醤油が普通のフランス人の台所にまで進出するのも、そう遠いことではないだろう。

 

ところで、今回は包丁でなく、シードル酢=リンゴ酢のハナシ。リンゴの産地ノルマンデーで作られるリンゴ酢は昔からあるが、一般的好みとしては、赤いワイン・ビネガーが主流だった。多分バルサミコが火付けとなって、イロイロな食酢が店棚にならぶようになった。そのひとつとして、冷涼な気候で豊富に収穫できるりんごを使ったアルコールであるシードルから作られる酢は、琥珀色ですっきりした酸性刺激も主婦の嗜好にぴったり。「酢」そのものが身体に良いのは知られているが、健康志向を利用した「りんご酢」の宣伝効用が表れはじめている。 我々の世代にはいい事ずくめのようだ。いわく、新陳代謝を活発にするから疲れを軽くする効果、コレステロールを減らし血液を浄化させる、肝機能の改善、便秘解消、高血圧予防等々。日本の市場に出回っているハニーを加味した“飲み易い美容飲料”まではまだ進んでいないフランスの純粋“リンゴ酢”による、熟年代向けで手頃な利用法をお知らせする。

先ず、目安は、カップ1杯の水(200cc)に小さじ1杯(10cl)のりんご酢を入れて混ぜるだけ。

 

朝、飲むと1日デトックス効果/夜は洗顔後、コットンに含ませて化粧水かわりにすれば、肌のくすみが消える/洗髪の最後のすすぎ水として使えば、髪に輝きがよみがえる/陽焼け後の肌のほてりをおさえる、あせも、ぶつけて出来た青あざ等の薬用効果/虫さされ、海でくらげにさされた時や軽い傷の消毒効果。

サラダのソースには、リンゴ酢+マスタード+オリーブ油+水を好みの分量で配分せよ。

私は最近のサラダソースはワインビネガーからリンゴ酢に切り替わっているし、フランス版《おばあちゃんの知恵》として一般的な、“洗髪の最終すすぎ水”にトライしたが、酢の匂いが頭髪にのこらないのが良かった。続行して、髪に輝きがもどりますように、、、、、

関連してつい言いたくなったのは、近頃ヨーロッパ全体に。アメリカと同じような肥満の人が実に多く見られる様になった事だ。西洋人の食卓には“酢の物”類が稀にしか登場しない。肥満は本人もつらいだろうが、失礼を顧みず言わせてもらえば、眺める方にもその巨大さが異種族めいて見える。ヨーロッパ的ボリュームの肥満体では、日仏11時間の飛行機等は、イスが窮屈で耐えられないのではないかと、つい想像してしまう。

リンゴ酢は一言で言えば、中性脂肪を燃焼させて、血糖値を安定させる働きがあるのだから、巨体をもてあます前に「食酢」という自然療法を実行してみたら良いのではないだろうか? フランスで、赤・白ワインビネガー市場をおびやかし始めたリンゴ酢は、目の前にせまる老化が気になりだした50代女性の味方として注目されてきている。

2011.10.2