ブルジョワ好み 〜カトリーヌ・ドヌーヴ(Cathrine Deneuve)〜

フランス共和国は三色旗と共に、革命の赤い三角帽子をかぶった胸像“マリアンヌ”に象徴される。何年かに一度、ブロンズ像は彫刻家とモデルを変えて作り替えられ、市庁舎や裁判所に飾られて、郵便切手になる。カトリーヌ・ドヌーブは1985 〜 89年のモデルに選出されて、胸像になった。若き日のB・バルドー、レテイシア・カスタもマリアンヌ像になっている。国民的人気のある女性が“自由の象徴像のモデルとして選ばれるのだから、女冥利につきる名誉だ。

 

カトリーヌドヌーヴ67歳、4人姉妹の3番目で14歳から映画の世界にいる。撮影やそれに付随するプロモーション活動、インタビュー、アフリカやルーマニアの孤児救済活動等、1日の生活リズムは規則正しいが早寝早起きは苦手。


 --- 週末は全く世間と交渉を持たないようにしているの。何の連絡がとれなくても、私の方には問題がないわ。 ---


 --- 皆が行くコート・ダジュールとか、有名人が集まるというような場所に仕事以外で出かけて行く気にはなれない。---


Life誌の表紙
Life誌の表紙

サンジェルマンのアパルトマンかノルマンデーにある別邸にいて本を読んだり、音楽を聴き、集めた骨董品の場所を入れ替えたり、趣味の園芸に時間を使う。状況や人にうまく迎合したり、無定見に跳びはねないので、昔から大人のブルジョワ層に人気がある。ずっと黙ったままで、動きもせず影のようなのに、彼女がそこにいるという事を皆が意識している存在カトリーヌ・D。彼女の若き日から、愛嬌の安売りはしていない。知らない人から、慣れ慣れしくされるのもわずらわしい。そのせいか、神秘的なイメージで知られているが、素顔の本人は気さくで、飾らない人柄だ。街角を1人で歩いているのや、パリコレ会場でカメラマンに目を付けられる迄は、他を避けるようにサングラス越しにも視線を動かさないようにして黙って座っているのを、私は何回か見ている。表面的なだけの社交は自然に避けるのだろう。

娘のチャラと映画祭に出席
娘のチャラと映画祭に出席

 

--- 私は子供が欲しくて、最初の子が生まれた時は20歳になったばかりだったわ。---


カメラマンと結婚して7年後に離婚。その後トリュフォー、ロジェ・ヴァデイムとの間に息子、マストロヤンニとの間に娘、ゲンスブールとはデュオでディスクをリリースしたし、クリント・イーストウッド等、結婚という形式は踏まなかったが男性遍歴は豊かだ。娘とは映画で競演もしている。息子と娘にそれぞれ男女の子供2人ずついるのだから、カトリーヌは4人の孫の祖母でもある。

 

 --- 仕事にかまけて、子育てがおろそかになる女優も少なくないようだけれど、私は子育てのために随分と仕事を断ったりしてきたわ。子供のそばにいた方が良いと感じていたから、そのようにしてきたわ。気がかりがあったら、演じている役柄を好きになれないでしょう?---

 

 --- 大体いつも面白いなと思える役柄しか引き受けないし、撮影に入ると他の事には一切興味がなくなるわ。---


左:毎年カンヌ映画祭のメインゲストとして赤じゅうたんを踏む
左:毎年カンヌ映画祭のメインゲストとして赤じゅうたんを踏む

どちらかといえば早口でクールなしゃべり口の彼女は、冷たいのか熱いのか判別しにくいような女で反って男心を燃やすような役柄でやってきたが、最近はコミックでとぼけた芝居もこなしている。彼女の美貌は香水シャネルNo.5、YSL基礎化粧品等の広告イメージとして、また相変わらず年2、3回は映画出演を続けているので、いつも何かでその写真に出くわす。フランス人としては早い時期から、Botox注射をして、唇の周囲、目尻などの小じわケアをおこたらない。加齢と共に太る体質らしく、かなり減量に努めているが、丸みが定着してしまって、名実ともに貫禄がでてきた。

30歳代のカトリーヌ
30歳代のカトリーヌ

 

 --- 勿論トシとるのは気になることだわ。今は女も男もこぞって若く見られたいと思っている。でもね、良い面もあるものよ。私の場合は、元来気ままにしていたい方だったけれど、時の経過に従って、社会通念からだんだん拘束されなくなったわ。自由が楽しめるのは、ある程度以上の年齢になってからだと分かってくるのね。---

 

きっと、カトリーヌ・Dは身体が動かなくなる迄、好きな映画の仕事を続けているだろう。自分の好きなように、我が道を行く人らしい。他人ではなく自分のために活きているのだもの。

 

 

2011.3.14