ベルギー新王妃マチルド

べルギー国王アルベール2世(79歳)が退位され、皇太子フィリップ殿下(53歳)が第7代国王に即位された。7月21日の式典の様子は仏TV各局がこぞってニュースで長時間映像を流した。革命で王制を廃止したフランスが、他国の王家の話題には、毎度結構熱心な興味を示すのはノスタルジーというものかも知れない。

べルギーは北部オランダ語圏のフラマン地域と南部フランス語圏のワロン地域の対立が深まっていて、更にドイツ、ルクセンブグ国境地域はドイツ語をつかう。2010年選挙後の541日間は、組閣出来ずに政権空白のまま、国が動いていた程の対立だった。以前とは逆にフランス語圏の経済力が弱まっているため、複雑な政情の国家統合の象徴となるべく、仏マスコミも新国王即位を応援したのかも知れない。


私達は生まれたときから「べルギー」という名の国があったから、「王位第7代」と聞くとアレと思う。オランダを含めてフランドルと呼ばれた地方は、スペイン領、オーストリア領、ナポレオンが没落すると今度は第2次世界大戦終了後の1944年までドイツに占領されていた。1830年オランダから分かれて、立憲君主国として歩みはじめて180年でしかない。その歴史から、今はヨーロッパの共存と平和を象徴する都市として、首都ブリュッセルにEU 本部や NATO(北大西洋条約機構)本部がおかれている。べルギーが分裂でもしたら、EUの大難問が又ひとつ増えるのだ。

マチルド王妃(40歳)は、王室初のべルギー伯爵家出身として、14年前の結婚当時から人気が高い。円満な国王夫妻は2男2女に恵まれて、即位式後は王宮バルコニーから家族そろって、広場を埋め尽くす市民に手を振った。この3日後には休暇の為に10日程の予定で、ブルターニュ地方の小島イルデューに現れた。フランス語圏のべルギー人は、休暇というとフランスへ来る人が実にが多いのだが、王家も今年はフランスで休暇のようだ。

マチルド妃は言語障害治療士の資格をとり、大学では表現文字障害を専攻して、独身時代はブリュセッルに事務所を構えて、普通に話したり書いたりするのが困難な人のテラピストをしていた。

「悩み」と対峙したいという生きる姿勢は、プリンスと結婚したあとの彼女の救援活動に良く現れている。

国内での乳がん撲滅運動、アフリカのエイズ感染した子供たちの救済や、201210月福島の避難生活者の仮設住宅を訪れたのは、王妃の意志の現れだった。他の苦しみを分ち持つという尊い心根は、王妃の笑顔を美しくしている。

イギリスでは現女王あとの立憲君主制廃絶論がくすぶっていたのに、ウイリアム&ケイトの結婚で、そんな話しはなかったことに成って、ロワイアルベビーの誕生で、王家の繁栄を英国中が喜んでいる。

他国より歴史も規模も小さな王家の華、堅実で寛い心のマチルド王妃が、分裂寸前のべルギーを、手を差し伸べ合い統一に向かわせる神秘力を発揮するかも知れない。

 

日本人のほとんどが美智子妃を敬愛しているように、べルギー人もこぞって、新王家を敬愛しているのだから。

7月24日イルデュー島のバカンス、長女エリザベト姫が次期第一王位継承権を持つ。

 

2013.8.12