モナコ公国の新公妃 〜シャーリーン・ウィットストック(Charlene Wittstock)〜

イギリス王室の結婚式のあとは、モナコ公国アルベール大公の結婚式が7月1,2日に行われた。地中海に面した絶壁に立ち、バチカン(0.44㎢)に次ぐ世界で2番目に小さな国。日本の皇居(1.42㎢)よりちょっと広いだけの面積しかない立憲君主公国(1.95㎢)。「フランス・モナコ友好協力条約」というものがあって、何か起きれば互いに助け合う国家間の約束があるし、フランス語が公用語で、ユーロマネーのタックス・へブン国。コート・ダジュールの税金を払わないで良いモナコには、ヨーロッパ大富豪がのきなみ邸宅をかまえている。特に“モナコ・グランプリ”の選手等は、それぞれ本国を出て本拠がここにある。

 

ハリウッド女優グレース・ケリーと結婚して話題になったレーニエ大公が亡くなり(2005年)、後継アルベール大公(53歳)は、国の“経営”のためにやっと結婚する気になったようだ。すでにカリフォルニア女性との間にできた娘ジャスミン(19歳)、トーゴの黒人スチュアデスとの間に7歳の息子もいる。結婚はしていないが、子供は認知している。どちらでも良い事だが、大公の姉と妹も、よくスキャンダルを起こしていた。私が思うに、狭い土地で大富豪の有名人ばかりがひしめいて、そのトップともなれば、隠れる場所もなく不自然な別世界の人に作られてしまうのではないだろうか? 虚飾世界は寂しいし、ある意味では可哀相な人種だ。

今から10年前、モナコ水泳大会200mクロールのチャンピオン、南アフリカ代表シャーリーン・ウィットストック嬢の首にメダルをかけたのは、アルベール公だった。二人はそれほどの接点もなく、それぞれの恋人とたわむれていた。彼女が腕を傷めて北京オリンピックを断念した頃から、2人一緒の写真が出回るようになった。7月1日の結婚式をひかえて、6月28日付けでシャーリーン嬢は、結婚を破棄して南アフリカへ戻るらしいというニュースがフランス中を駆け巡った。ともかく彼女は1人で空港に現れたらしい。“てっきり”という仮定のニュースを否定する公国抗議が発表された。すでに5,6年前からの忍ぶおつきあいだったが、婚約発表後マスコミが2人の過去を洗いざらい公表して情報過多気味だった。

世界40ヶ国代表、850人の友人・知人、3000人の市民挙式参列者等の招待客が到着しはじめている。宮殿付菜園の野菜を食材にしてアラン・デュカスが300人分の食卓、ジャン・ミッシェル・ジャールが音楽の宵の為に大スクリーン舞台を設置して楽器も運び込まれた。ここまで準備万端が整っていては、例え何があったとしても後に引けない。小さな国の大きな結婚式で、予定通り二人は未来へ“OUI”と神の前に誓いあった。

英語しか話さない新大公妃は仏語の勉強中。20歳の年齢差。宮殿を取り巻く儀典方と産業のないモナコの観光計画経済。彼女の若さと、元水泳チャンピオンのガッツこそがモナコにとっても貴重だろう。

シャーリーンの気質はシンプル、ロマンチック、ボーイッシュと表現されている。ジョルジュ・アルマーニがデザインする彼女のシンプルでフェミナンなロングドレスの写真は、どれも素敵で完璧だ。スーツ類はラガーフィールドが、Dior Hommeと協力してコーデイネイトしている。新大公妃33歳、174cmの身長に長く裾を引く白いドレスは、一段と美しかった。

 

 

2011.7.18