生涯現役

リーヌ・ルノー81歳
リーヌ・ルノー81歳

もし彼女が「私は70歳よ」と言っても、周りは「まあ、お若い」と必ず言うに決まっている。 そのくらい彼女は生き生きと青い目が輝いている。リーヌ・ルノー、1928年生まれ、81歳。80歳の去年、舞台で踊ったり、笑ったりの2時間公演をやりとげた。

 

あんなに元気で足でも折るのではないかと心配したが、大入り満員の芝居はついに劇場から直接茶の間に実況放映された。話し声には暖かさがあり、それでいて、意味もなく他に迎合しないユーモアがある。だから彼女の笑顔は他をなごませる。

 

歌手として、USや英国、アフリカ、フランスで興行をして、各国で人気番組の常連として知られた。華やかな歌手時代に幕を引き、最近は映画や芝居に忙しい。24年前彼女が作った「エイズ撲滅アーテイスト運動」は、年末恒例の国営TV中継による募金集めで人気がある。 フランスで「歌手」と名がつくほとんど全員が毎年番組に協力している。うらやましい人徳だ。スターにありがちな我ままさが無いゆえに年齢を“尊敬”され、好かれるのだ。

80歳の誕生日にダニー・ブーンから
80歳の誕生日にダニー・ブーンから

1年前フランス映画界の不況を救ったと言われた程ヒットした“Bienvenu chez les Ch’tis”で、主役・監督ダニー・ブーンの『しっかり母さん』は、はまり役だった。二人共「北」出身だから方言で観客を笑わすのは、お手のものだ。

 

リーノの母は速記者、父は週日は繊維会社のトラック運転手をして、週末はトランペット吹きだった。5年間の戦争、疎開体験の後、教師になって欲しいという母の望みを退けて、リール市の音楽学校を内緒で受験した。US仕込みのジャズを輸入した作曲家として名を成していたルル・ガスト37歳との運命の出会いは16歳の時だった。彼女は彼によって恵まれたスター・ダムの道を邁進して、67歳になった時、45年間連添った彼の死を看取った。心の隙間を埋めるように、一層仕事に打ち込むようになる。コレなのです!!

 

彼女の美や若さや健康は、前向きに自分を鍛えることで持続している。年中人前に出ているので、1年に1度位の割合でヒアルロン系のしわのばしの注射を受けているという。

リーヌ・ルノー30歳、50歳
リーヌ・ルノー30歳、50歳

「フランス革命200年祭」に歌手として来日したのは、もう20年も前。仏大使公邸レセプションで、有名人だと説明されても、私はその時知らない人だったから「“マルセイエーズ”は男性の声の方が良いのに」なんて思った程度だった。

 

彼女はまだまだ現役を続けるだろう。こんな風に老いていけるのは、なんて幸せだろう。全く同じ歳のジャンヌ・モローが枯れた感じで、魔法使いのようなしゃがれた声を出すのと良い対象をなす。

 

 

2009.7.17