<パリ発> “コーヒー”と“茶”の対戦 〜Thé ou Café〜

From 雪

Bioブームと肩を並べてお茶が静かに浸透してきたと思っていたら、茶葉を売る店がシックなカルチエに増えてきた。


今年月、ついにシャンゼリゼ通りのネスプレッソ店近くにロシア系の「KUSMI TEA」がオープンした。ご存知ロシア人はサモワールで一日中お茶か、ヴォトカで酔っ払っているかというお国柄だ。150年前セント・ペテルスブルクで創業され、ツアーリご用立てに指定されたが、ロシア革命以来所有者が何代か変わっている。パリ市庁舎横のVHBデパート(フランス版東急ハンズ)にかなりのスペースを陣取った時、コレはいい線を行くぞ!!と感じた。ともかくカラフルでペテルスブルク宮殿色の華やかなパッケージが今時のデザイン感覚にもぴったり。NY、モントリオール、ヨーロッパ各地にあるが、まだ東京にない。(今頃伊勢丹あたりとハナシがすすんでいるかな?)

寿月堂
寿月堂

片や伝統重視の老舗も黒背広の男性販売員だけをおいてZENムードでがんばっている。パリ茶葉店に共通しているのは、日本、中国、台湾、インド、セイロンなどの茶とジャスミンやベルガモット、カネル等西洋人におなじみの香りを混ぜ合わせることだ。日本茶だけを専門にしていた九州茶組合の店は4年前に撤退した。渋みで商売は難しいだろうと想像していたところへ、2008年、サン・ジェルマン・デ・プレに築地から「寿月堂」が純粋日本茶店としてオープンした。店内には天井から竹筒が百本近く下がった竹林デザイン。茶葉だけなら日本食を売る店で自由に手に入るようになったから(値段は日本の2倍)、この店は「和」文化に一役を投じようという気構えだ。

ネスプレッソ・シャンゼリゼ
ネスプレッソ・シャンゼリゼ

フランスではインスタント・コーヒーはほとんど売れない。コーヒー・メイカーは冷蔵庫と同じくらい家庭の必需品だ。スイス本拠の多国籍企業ネスル社が生死を傾けて開発したカプセル挿入で本格派イタリアン・エスプレッソ宣伝作戦も加熱して、今や世界中に出店している。資本金が格段に豊からしく、パリの「ネスプレッソ」は広くモダン、採算には目をつぶった店内で、カプセルを買ったりカフェが飲める。家電業界はカプセル挿入用の機械デザイン開発にしのぎを削っている。スターバックス店も街角にニョキニョキ現れて繁盛している。

 

カフェ文化のすそは広いが、これに攻勢をかける茶は、健康志向にアジアムード演出をからめてスノッブ気分にさそう。「コーヒー」対「茶」の市場競争は、デトックス効用(=体内老廃物を流す)を打ち出した茶より、過疎村まで浸透している根強い慣習のコーヒー側の方に余裕があるが、加齢と共にアンチエイジを気にする特に夫人の間に静かな浸透を見せているのは確かだ。

1692年創業、ルイ14世代から続く「ダマン・フレール」(ヴォルジュ広場)の店内
1692年創業、ルイ14世代から続く「ダマン・フレール」(ヴォルジュ広場)の店内

2011.3.18

 

世の中をハスに眺める癖のある自由業主婦。
人間相手だとイライラがつのるので、自然風物を愛でる。
但し仙人ではないので、普通の社会生活に準じているつもり。
フランス在住20年。