<パリ発>パリのインド人 〜ガネーシャ神を祝う〜
From 雪
4本の腕を持つヴィシュヌ神、像の頭と人の身体のガネーシャ神、ヒンズー教の神々は、視覚からして、我々には強烈だ。フランスにはざっと46,000人のインド系の人々が暮らしている。そのうち25,000人がパリ、他はリール、ツールーズ、グルノーブル、リヨンに散る。元ベンガリ、パキスタン、スリランカ、タミール、バングラデシュ等の移民がヒンズー教を信奉している。〈パリの日本人は12,512人...フランス全土では30,947人(2010年統計)〉
パリ18区の北駅近くに、ヒンズー教寺院があり、毎年8月最後の日曜日はガネーシャ神を寺院から連れ出して近隣を練り歩く宗教祭りが、もう16年間続けられている。今は少数になったが、キリスト教国でもマリア像やキリスト像を担ぎだし、神父を先頭に町中を行列して、神の加護に感謝する祭事がある。
ガネーシャ祭、今年は8月28日、うす寒いパリを舞台に、まず水まき自動車が行列の通り道を先導放水して道を清めて行く。水にはバラとサフラン・エッセンスが含まれていると見物人のパキスタン人が教えてくれた。続くは、いたずら騒ぎ警戒用にポリスの車が眼を光らせていることを群衆に知らしめるためノロノロ運転で続く。さあ、太鼓や拍子木の音、歌声が真近に聞こえてくる。美しいサリーで盛装した夫人たちが道にあふれている。道路脇では、ココナツとパッションフルーツ味のジュースを手渡してくれる。
フランスで生まれたであろう若い娘達も子供もサリーを着て、通りの店々の前に飾られた神への供物について好奇心いっぱいのフランス人達に説明している。ガネーシャの載った山車から、マイクを通してヒンズー語の祈りが聞こえる。人、人、人。お香が焚かれ、煙がたちのぼり、私にはなつかしいニューデリーの匂いがする。太陽が暑いはずの夏、神を通じ、祭りを通じ、民の幸せと故国への郷愁が奉じられている。1950年ポンデイシェリーがフランスからインドに返還された時、住民は仏印どちらの国籍でも選択できたから、かなりの人がフランスにやってきて、自然にインド系が大勢住む地区ができていった。
知る人ぞ知る、パッサージュ・ブラデイーは10軒くらいの香辛料食糧品店と、30店のカレー・レストランが軒を並べている。このパッサージュは、日本の百貨店や大ブティックの衣類バイヤーが買い付けをおこなう問屋街に隣接していて、ここでカレーの昼食をとるのを皆楽しみにしている。安くておいしい。これだけの数のカレー屋が雑多に並んでいると、食べている間はパリからインドに直行したような気分になれる。
街の角ごとに、山車は止まって、新たな唄や踊りが繰り広げられ、11時に寺院を出た行列は3時に寺院に戻り、ガネーシャ神は元の場所に安置される。
*写真をクリックするとスライドショーでご覧いただけます。
2011.9.13