ヨーロッパでは、かっこいい主夫こそ、かっこいい男だそうだ!

From ラ ムウエット

この2・3年、街の広告に男性のモデルが赤ちゃんを抱いている写真が多くなった。「かっこいい男は、子供を抱いていてもかっこいい男」というのがヨーロッパの今の理想の男性像。

Liberté, Égalité,Fraternité(自由、平等、友愛 )はフランス共和国の有名な標語。

だけど今日の雑誌の記事のタイトルには、この3文字の最後の言葉が Fraternité(友愛)ではなくて、Paternité(父親の愛)に替わっていた。 キャリアのある奥さんを助けるために家庭に入った男性−主夫の話。


統計では、この10年の間に育児休暇を取る人が10倍に増えたという。

育児休暇は産休とは違う。産休は出産前後の休みで、女性は15週間、男性は10日間。

一方、育児休暇は男女とも、12歳以下の子供または養子を持つ親であれば以前は3ヶ月だったのが、最近延長されて4ヶ月間になった。

女性の場合には1/2の時間短縮または、4ヶ月間の休暇を続けて取るケースが多いが、男性がこの育児休暇の申請をする場合、フルタイムの仕事から4/5時間短縮を申請する事がほとんどとの事。そしてこの育児休暇の申請をするのは女性の場合20人中一人。男性の場合には1000人中たった14.3人とまだまだ男性の育児休暇の申請率は少ないと言われている。

娘の大学の同級生アマンド君のパパは「主夫」なのだという。アマンド君のママはEUの通訳でヨーロッパの言語8カ国語の通訳なのだそうだ。 EUの通訳は特殊な仕事で非常に高所得な職業として知られているのだが、私がウェブで調べたところ、手取りが一日400ユーロ(約5万5000円)ということは、月にもし10日間働いたら手取りが約50万円。5人の兄弟の世話や家事はパパが家で主夫をしてしっかり家の事を取り仕切っていても十分に余裕がある。

私の勤める会社にも、事務職の男性でハーフタイムの人がいる。彼は朝早く出社して12時には帰宅して子供を迎えに行く。彼いわく、「僕の奥さんがしっかり仕事で稼いでいるから、僕は彼女のフォローをしている」とのこと。

ベルギーの場合、日本のように子供達は集団登下校というのがないため、必ず親が学校の送り迎えをする。最近とくに思うのが、学校の前で下校する子供達を待っているパパさんの人数が増えた事。16時の下校時のお迎えに行けるサラリーマンのパパとは一体どんな仕事をしているのだろうか?


記事の中の男性達は結婚して子供が出来るまではフルタイムの職業を持っていたが、子供が生まれ、奥さんのキャリアが進んで行くうちに、どちらかが仕事をやめて育児と家事をする必要になり、夫のほうが完全に「主夫」となる事に決めたり、1週間交代で夫婦のうちどちらかが家事、育児を完全に担当してお互いの仕事を助けたりしている。

でも、この記事のような、そしてアマンド君のパパのように「主夫100%」のパパはなかなかまだ少ないよう。そして「主夫100%」への社会的な偏見もまだまだ大きいようだ。

それでも私の30代の同僚達のほとんどが、妻と家事や育児をきちんと分かち合っている。

ジャンの家事担当は出社する前の家族全員のお昼のサンドイッチ作りと朝ご飯の用意。そして4時に退社して、夕方の子供のお迎えとお風呂、洗濯とアイロン掛けと庭仕事なのだそうだ。よく見ると、彼の着ているワイシャツはクリーニング屋に出したようにパリッとプロ並みにアイロンが掛かっている。

30代の彼らは何のこだわりもなく会社の育児休暇を取っている。その背景には、ベルギーの女性は仕事をしている人たちが多い。それというのも、一般的には夫一人だけの給料ではやっていけないというのも現実なのではあるけれど。

つくづく感じるのが、ヨーロッパ女性の世代による仕事と家庭の意識の違い。

60代の女性は、昔どおりに主婦業で家にこもっていた。夫と離婚したくても、経済的に自立していなくてどうしようもなかった時代の人たち。

50代の女性は社会に出て仕事し、同じように家事もする。キャリアウーマンの始まった年代の人、女性の社会進出とともに離婚率も高くなった世代 。

40代の女性は仕事と家事を夫婦で分かち合う先駆者ではあるけど、まだまだ家事の負担率は大きい。そして60代の母親に家事や育児の手伝いをお願いしている人が多い。

30代の女性は 家庭も子供も夫と平等にこなす。キャリアのチャンスがあれば、夫に家を預けて仕事を頑張り、夫の理解も深い。

30代の男達で今「仕事よりも家庭が一番大切」と言う人が多くなった。今の30代の人たちは、母親が社会に出て仕事を持ち始めた世代の子供達。それと同時に、家庭崩壊が多くなった世代の子供達。だからこそ、自分の家庭を持った時に、家庭を大切にしたいという人が多いのではないだろうか?

子育てや家事を積極的にしてくれる、いや、妻とシェアしようという男達の意識の変化。

これこそが此れからの女性の社会進出の一番の助けとなるのでは。

 

「かっこいい男は、かっこいいパパ」

そう、日本のかっこいい男達は何時になったら子供を抱いてもサマになるかしらね?

 

2014.6.17

ラ ムウエット

フランス北部/ノルマンディー在住の日本人
趣味は読書とインテリア、壁塗りとペンキ塗り。
19歳の娘がいる。