街中で野菜作り!Incredible edible (ゲリラ・ガーデニング活動)

From ラ ムウエット

歴史的にもゲリラ活動の好きなフランス人やベルギー人の間に、今イギリスから始まったゲリラ•ガーデニング活動が少しずつ広まってきている。

その発祥は、世界的な経済恐慌で失業者の溢れる北イギリスの小さな町Todmorden。人口が半減して廃れてしまったこの町に住むパムはどこにでもいる普通の主婦。いつものようにおとなりさんのメリーと一緒に台所で井戸端会議をしていた。

彼女達たちの心配事は子供達の将来の事。

失業率の高いこの町は治安も悪いし、思ったような子供の教育の場や就職先が見つからない。そして世界的な食料危機や農薬汚染、台所を預かる主婦としては家族の健康も心配事の一つ。将来に大きな不安を抱いているのはけっして彼女達だけではないはず。そこで「お金なんて全く無いけど、 私たちにも<もっといい世界を作る事>が出来るのでは?」ということでご近所さんと一緒に家の前のバス停にある草っ原に無農薬の畑を作ることにした。そしてそこにはこんな看板が。

Incredible edible

<信じられないかもしれないけど、好きなように採って食べていいのよ>    

この原っぱは町の公共スペース、もちろん町の許可なくして勝手に使用するのは違法、「でも、そんな事気にしてたら何にもはじまらないから!」ということで、無許可で教会の周りの敷地にも、街中の花壇の中にも、どこか空いている所に食べられるものを植える、という彼女達のゲリラ•ガーデニング活動が始まった。「どっちにしても刑務所は満杯で私の様なデブが入れる余地がないから、だからやるキャないのよ」とパムは太っ腹。彼女達の活動に共鳴した隣人や医者、そして学校の教師達が同じように至る所で、食べられるものを町の中に植え始めた。駅のプラットフォームのプランターにはキャベツと人参。墓地にはバラのかわりにブロッコリーが。病院の前の花壇の真ん中にはリンゴの木が植えられ誰でも採って食べる事が出来る。彼女達の(政治の絡まない)草の根運動はあっという間に町の人たちにひろまっていった。そしてついには、町の警察官までもが警察署の前にプランターを置き、食べられるものを植えて人々に提供する様になった。

食べられるものを自分たちで栽培して皆に分け与えるこの活動は低所得者の人々の台所を助けるだけではなく、植物を植え、育てる楽しみを人々に与えた。そしてまた無農薬で旬の果物や野菜のおいしさを人々に目覚めさせた。 「飛行機で何千キロも離れたところから輸送された農薬だらけかもしれない果物を食べるのか?」「加工されたファーストフードや冷凍食品を食べるのか?」 

パムとメリーは町の近郊農家に掛け合い、安全でおいしい近郊でとれた食品を町の市場で売り出すように勧めた。近郊農家は町の市場で直接消費者にその調理方法を教えたり、栽培方法や種や苗の交換会などのイベントなども開くようになり町の人々の交流の中心となった。人々がこの運動を通じで助け合い、交流が生まれるようになると思ってもいない相乗効果として町の犯罪率が著しく減って行った。

この町では今、近郊で採れた食品を使った自然食のレストランや、無農薬栽培トレーニングセンターや ミツバチや魚の養殖施設も創設され、学校でも農業のクラスを取り入れ農業の修士がとれるようになっている。農業機具の無料貸し出しには、大麻栽培で没収された機具を警察がまわしてくれるようになった。そしてIncredible edibleの活動を知った世界中の人々がTodmordenの町見学ツアーに来るようになった、もちろんそのための(町の許可なし)タウンガイドマップまで発行されている。

子供達に本物の食品の味を、そしてより良い教育と喜びのある仕事をという普通の主婦の普通の願いから生まれたこのゲリラ•ガーデニング活動は次第におおきくなった。活動の創始者パムとマリーは公演にも引っ張りだこ、公演会でのパムの言葉が印象的だった。

Incredible edible の活動は未だに事務所も代表電話番号も何もないのよ、そしてこのゲリラ•ガーデニング活動、貴方がたった一人でもいつでも始める事が出来るのよ、アッでも気をつけてね、出来れば刑務所が満杯の時を狙ってやってね!』

 

2013.10.30

「incredible-edible のホームページ 」

http://www.incredible-edible-todmorden.co.uk/home

 

ラ ムウエット

フランス北部/ノルマンディー在住の日本人
趣味は読書とインテリア、壁塗りとペンキ塗り。
19歳の娘がいる。