「照り焼きエセチキン」
メルボルンのある中華食材店でエセ肉をみつけた。エセ肉とは基本的にはグルテンミートのこと。小麦粉を布に包んで洗い流したときに残るたんぱく質の塊で肉や魚に近い味や食感を生み出す。 日本の菜食者の中にはわざわざこれを自宅で作っている人もいるが、私はそこまでやってはいられない。それに中国人のプロが作った食感と味わいには、とうていかなわないから買ったほうが早くて旨い。
□■照り焼きエセチキン■□
<材料(2~3人分)>
1、グルテン鶏肉 2枚
2、照り焼きソース
3、クスクス カップ1
4、アスパラガス 数本
5、季節のサラダなんでも
<作り方>
①照り焼きソースをあらかじめ作っておく。(醤油9・みりん6.酒3に砂糖を好みの量で加え、とろっとなるまで煮詰める。沸騰させないように気をつける)
②クスクスは同量の沸騰した湯に入れ、塩とオリーブ油を少々垂らし、火を消しよくかき混ぜ、蓋をして放っておく。
③塩を入れ沸騰した湯でアスパラガスを軽くゆで、すぐに水に浸し、皿の端に飾る。サラダを皿の中央に盛る。
④グルテン鶏肉を食べやすい細長に切ったあと、両面をフライパンで焦げ目がつくまで焼く。
⑤弱火にしてから照り焼きソースを素早く全体にからませ、火からおろす。
⑥サラダの上に平たく丸めたクスクスを載せ,その上に鶏肉をかぶせる。レモンを添える。
照り焼きソースの味は濃厚なので、これだけで充分だが、好みによってはサラダやアスパラにドレッシングをかけてもよい。
* * *
メルボルンの菜食レストランをなめてはいけない。菜食でない人をも引きつけるほど旨いしバカ儲けしている店がいくつもある。
ところで中国菜食者は昔からエセ肉を作り出す達人である。ロンドンで菜食レストランをやっていたときにも私は缶詰で売られているこの中国製のエセ肉を使っていた。日本に戻ったときに似たようなものを見つけたので嬉しくなり、買おうとしたら一緒に住んでいた男がむきになって反対してきた。
「オレはこういうのが許せないんだ。肉の旨さが忘れられないのにムリに菜食をやってる連中に、こんなエセ肉で釣ろうとしてんだから。食うほうも食うほうだよ。肉が食いたいんなら本物の肉を食えばいいじゃないか。」
そこで、「私は菜食じゃないけどこれが好きだから時々食べたくなるの。それのどこが悪いの?」と反論。しかし男は頑固に反対し、私に最後まで買わせようとしなかった。
(このときの恨みつらみが消えず、それも原因のひとつで私はアンタを捨ててやったんだ。ヤイ、わかってのか!)・・・実はこれが我がひとり息子の父親。
メルボルンにも中国菜食レストランがいくつかあるが、その中でもダントツに旨いのがボックスヒルにあるベジハットという店だ。そんじょそこらの中華料理なんてかなわないくらいここのエセ肉料理は絶品でクセになる。種類も豊富で海老や魚、鶏肉、豚、牛と、なんでもある。そのほとんどがいわれなければニセモノとは当てられないのだからおもしろい。しかし玉ねぎや、ニンニクさえも使わないのに充分に美味しいというのは、化学調味料をひそかに使っているからか?・・・とは考えたくない。まあそうだとしてもここに関しては大目に見てやろう。それになんてったって安い。また、たいがいの中華は悪い油や悪質な肉で食べたあとに気分が悪くなるが、ベジハットの料理はとても爽やかな満足感が残る。これが菜食のよいところでもある。
2009.10.23