はならびリポート(1)

初夏に、2年半の長きに渡る歯列矯正がやっと終わった。と思ったのに、透明樹脂のマウスピースをはめて、まだまだ続くらしい。とはいえ、歯の表面にブラケットという小さい金属片を付けてそこにワイヤーを通す、いわゆる矯正器具から解放され、気分も軽くなった。

 

メノポ世代のいい大人がなぜ歯列矯正など始めたか。その顛末をお話しようと思う。

 

3年前のある日まで、矯正をすることなど考えてもいなかった。多少のデコボコはあるが、年齢的に無理だという思いで見ないフリをしていた。ただ、ホワイトニングには前から興味を持っていた。顔や体型と同様に、手や歯は年齢が出やすいと思っていた。アンチエイジングのためにもホワイトニングはやりたかった。歯科検診を受けたクリニックの待合室に置いてあった、ホワイトニングの案内書に目がとまった。詳しい説明に納得がいき、早速ホワイトニングを始めることにした。

 

上:ホワイトニング前/下:ホワイトニング2週間目
上:ホワイトニング前/下:ホワイトニング2週間目

歯型を取り、数日後に柔らかい樹脂のマウスピースが出来上がった。夜、そのマウスピースに薬を入れて歯にはめて寝る。翌朝、わずかながら白くなっているのが感じられる。上下別々に行うので、白くなっていくのが自分でも確認できる。上下1週間ずつ、合計2週間で、いつも大きな口で笑っていたいほど白くなったと感じられた。それはいいのだが、歯に意識が向くことで、見ないフリをしていたデコボコが気になりだした。先生に見てもらうと「前歯も少しフレアーになっているんだね。」と言う。そんなことまで気にならなかったのに、先生に言われてみると確かに少し反っている。矯正をすれば直ると言われたが、2〜3年もの間、矯正器具をつけて暮らすことや金額的なことですぐに結論を出すことはできなかった。まずは相談だけしたらいいと、矯正専門の先生を紹介された。これがとても良い先生で、分かりやすく、丁寧に説明してくれる。その話の中で私が興味を持ったのは、見た目のために矯正をする人がほとんどだけれど、実は矯正は歯の健康維持のためにとても良い、ということだった。デコボコが無ければ歯ブラシが良くとどき磨きやすい。良く磨ければ口の中は常にきれいに保て、歯周病にもなりにくい。結果として歳をとっても入れ歯になるリスクが低く、一生自分の歯で過ごせる可能性が高い、という。費用の目安も説明があり、一度に支払うのではなく、矯正終了時までに払えばよいのだということだった。矯正器具をつけて旅行気分でもないし、その間の旅行は控えるとすれば、どうにかなりそうだった。

ただ、やりたいといってすぐに出来るものでもなく、歯茎や、骨、顎、噛む力などの様々な検査をしなくてはならなかった。その検査が終わり、何の問題も無いので矯正可能であることが分かった。気持ちは固まった。「やります!」と宣言する前に最後にどうしても先生に聞いておきたいことがあった。

それは、この歳で始めて大丈夫なのか、ということだった。50代半ばを過ぎて矯正を始め、やっと終わったと思ったとたんに入れ歯になった、ではシャレにならない。先生は「80代まで自分の歯でいられる。」と太鼓判を押してくれた。

 

その頃、こんな出来事があった。久しぶりに仕事で付き合いのある同い年の男性に会ったら総入れ歯になっていた。入れ歯だって随分お金がかかるだろうに、だったら私は入れ歯にならないようにお金をかけよう、という思いも働いた。

 

いよいよ矯正がスタートした。この続きはまた次回。

 

 

2011.8.15