はならびリポート(2)

いよいよ矯正スタートだ。

 

私はオヤシラズは前に抜いてすでに無い。上の歯に一箇所ブリッジがある。ブリッジを壊さず、歯は本も抜かずに並べ替える計画が立てられた。

 

 200811月に歯にブラケットを取り付けた。金属ではなく透明な素材なので、これは見えにくい。そこにワイヤーを通して歯の一つずつを結んでいく。力を加えて後ろに引っぱるらしい。歯というものは下に合わせて上の歯が成り立っているらしく、まずは下を直してから上を矯正するのだという。そのために、この時は下の歯だけにワイヤーを結んだ。

 

ブラケットをつけて歯茎がひと回り大きくなったので、随分邪魔な感じがする。しかも硬い素材なのでほっぺたの内側に口内炎が出来た。歯を引っぱって根っこごと微妙に動くから噛むと痛い。一番噛めないのが生野菜。火を通した野菜も難しい。すべてのどを通る大きさに小さく切って食べる。しかし、水分が少ないものや硬いものはのども通らない。この時期の食事は具の無い茶碗蒸し、ポタージュ、お粥などになる。お粥も米粒が残っていると歯にさわって痛む。韓国で食べたおいしいお粥を思い出して、出来上がったお粥をハンドミキサーでポタージュ状にしてみた。本場の作り方は、米粉から作るらしいので全くの別物だが、見た目は韓国風。人参やカボチャを一緒に煮て作れば、色も美しいお粥が出来上がる。塩味も美味しいし、和風だしでも美味しい。

そういえば矯正をすると痛くて食べられないし、外食をすると矯正器具に食べカスがひっかかって恥ずかしいので、食べるのを我慢してやせる、という話を聞いたことがあった。先生に聞いてみると「それがそうでもないんですよ。丸呑みしちゃいますから・・。」その通り。23日で痛みが治まれば、何でも丸呑み。

 

先生から、歯並びが変わることで顔がほっそりする、という説明も受けたことがある。どうもその時、私の目がギラリと光るらしい。先生、あわてて「アッ、過度な期待はしないで下さい。」とダメ出しをする。このセリフは矯正期間中に何度も聞くことになる。

矯正期間中は食べ物が器具に引っかかり、虫歯になりやすい。虫歯になると治療のために矯正をストップしなくてはならない。だから歯磨きは念を入れなくてはならない。通常の歯ブラシに加えて歯間ブラシは必需品となる。ブラケットのまわりの細かい部分のための極小サイズのブラシ、360°の丸い〝たんぽぽの種〟も使ってみた。

 

出かけるときは折りたたみの歯ブラシと歯間ブラシを持ち歩く。フイルムケースにそれらをセットすれば小さな化粧ポーチの中でもバラバラにならないし、フイルムケースはミニミニコップの役目もしてくれる。こうして時間をかけて丁寧に歯磨きをしているうちに、歯に対する気持ちもさらに深まってきた。

下の歯並びが揃ったところで、上の歯にもワイヤーを結ぶことになった。ワイヤーで奥に引っぱりながら、極小サイズの輪ゴムを上の歯と下の歯に掛ける。口を開けると白いゴムがキバみたいだ。ゴムで上下に引っぱられるので口が開きにくい。長い間話す時と食事の時は外すが、それ以外はゴムを掛けている。ゴムは大・中・小とサイズがあり、小さいほど、引っぱる力が強くなる。私は主に中サイズを使用していた。ゴムを掛けるにはプラスチックの掛け具を使用するのだが、ワイヤーに取り付けたフックが小さくて見えない。鏡に向かい、メガネをかけて、大口を開けて、慣れるまでは大変だ。

下の歯が比較的早く揃ったので、上の歯にワイヤーを結んだ時点でゴールが見えた気がしていた。実際、先生もそう思って来年のゴールデンウィークには終了するかもしれないと言っていたのだ。それが2009年の夏。矯正がスタートして10ヶ月程が経っていた。 

 

ところが、それは大誤算となる。ここからまた、大変な思いをしなくてはならなかったのだ。

 

 

2011.10.28