トロントワ クラポー グリ

最近思うことがある。化粧鏡の中の顔がたるんでいる。50余年、重力の影響を受け続け、さらに年々衰える筋肉は、お腹や二の腕だけではなく顔も変えていく。悲しい。顔を引き上げるにはリフティングかぁ・・。ちょっと怖いし、私にはまだ扉の向こう側のことに思える。 エステは?毎日行ったら効果があるかもしれないけど、とても無理。 ひと月に1回行けたとして、引き上がるより垂れる速度が早いに決まっている。

 

フェイササイズというのもある。顔の筋肉を動かして引き締めるというもの。目を大きく開いたり、口を大きく開けたり、すぼめたり。TVで見ながら真似をした。これは良さそう。でも、これだって毎日やらなきゃ効果は期待できそうにない。

 

ウーン、何かないかなぁ・・と思っていたら、あった。フランス語の早口言葉というのを教わったのだ。勿論、舌の回りを良くして、発音を正確にするためのものだ。でもこれ、すごい筋肉運動。日本語には無い、慣れない発音を早くするためには、口を思いきり横にイーッと引っぱったり、タコみたいにとんがらせなければ出来ない。 ひとつの早口言葉をスムースに言えるようになる頃には口の周りの筋肉がだるくなっている。

 

「一石二鳥」というコトバが脳のどこかでキラキラ光り、「お得だよ」という甘いささやきが聞こえてくるよう。 フランス語の文章独特のリズムに慣れて、おまけに口角が引き締まったら、こんなに良いことはない。

 

あとは3日坊主にならないようにするだけだ。いちいちプリントを出して机に向かうのは絶対に無理。3日ともつわけがない。1日何回も口をついて出るようなウマい方法はないか。どこまでも横着な私だ。そこでトイレの壁に早口言葉を貼ることにした。

 

メガネなしでも見れるように太めの黒いペンで大きく書いた。大成功。忙しい時もトイレは行く。急いでいても短いフレーズなのでひとつくらいは言える。教えてもらった15の早口言葉を全部言うと、かなりいい感じ。早口言葉の本来の目的を考えると、本末転倒の感じがしないでもないけれど、やらないよりマシだ。

 

私の顔がリフトアップするのと、フランス語が上達するのとどっ ちが早いだろう?両方ダメになることも考えないで、上手く行くことばかり考えている。こういうのも「カエルの願だて」って言うのかな。これは、自分だけの御都合主義は必ず失敗するよという戒めだが、そんなことにならないように、カエルの出てくる早口言葉をひとつ。

 

トロン トワ クラポー グリ ダン トロン トワ グロ トゥル クリュ.
Tronte-troi crapauds gris dans trente-troi gros trous creux

 

 

 

 

2009.8.1