ヘバーデンケッセツ

経年変化というものは、実にいろいろなところに現れるもので、思ってもいないことが起こったりする。体が太ったわけでもないのに、持っている指輪のどれもこれもがきつくなり、はめるのも取るのも四苦八苦するようになったのは年程前。アームが太いデザインは、なおさらきつく、観念してサイズ直しをした。改めてサイズを測り直すと「エーッ!」というサイズ。指輪のサイズが大きいのは本当にエレガントからほど遠く、嫌なんだけど、そういっている場合でもない。しかも、よく見ると小指の第一関節が膨らんで曲がっている。これが原因で指が太くなったのか・・・。そのうちに治るだろうと思っていたのだが、いっこうに治らない。特大サイズの指輪を買うことに慣れてきても、小指の膨らみは、いよいよ増すばかり。リウマチを心配して検査をしたが、リウマチではないというので一安心したものの、理由も分からず何年経っても腫れている。腫れているといっても痛いわけでもないので、気になりつつも時間が経ってしまった。

 

つい最近、母が家の中で転んで腰を痛め、付き添いで整形外科に通った。時間はかかったものの、母の腰も徐々に良くなり安心するようになって、自分の小指を思い出した。付き添いの診察室で若い先生の前に手を出してたずねてみた。イケメンの先生はこともなげに「へバーデン結節」という聞いたことも無い病名を口にした。

「ヘバーデンケッセツ? 何ですかソレ?」 

 

先生に渡されたリーフレットには「原因は不明だが、第一関節に発生する変形性関節炎で、一般に40歳代以降の女性に多く発生する。」とある。メノポ世代に出る病気らしい。「関節の動きが悪くなったり、痛みのために強く握ることも困難になる。」と書いてある。ただ膨らんでいるだけの私の小指は軽症ということだろう。ただ、この関節炎は原因不明なので治せないのだという。痛む時はテーピングをしたり、もっと悪くなれば手術もするという。

「でも、このくらいなら何もしなくていいですよ。一種の老化現象です。」

若い先生はオトナの気持ちも知らずに軽く言い、

「白髪が出るのと同じことだと思って下さい。」

と追い討ちをかけるように言う。なんとも納得できない私は

「白髪は染められるけど、指は見えちゃいますねぇ・・・。」と言ってみる。

先生、無言。

「カッコ悪いってだけですねぇ・・・。」と、尚も言ってみた。

「ソウデスネ・・・。」先生の声が小さい。

だいたい付き添いで来た娘の指を親切にも診てくれて、先生に恨みがましくブツブツ言うのは筋違いだ。丁寧に頭を下げて診察室を出たものの、あまり気分はよろしくない。

 

このうえは、ヘバーデン結節以外はアンチエイジングに励むべく、ハンドクリームを摺り込む日々。そして、気づいた。ヘバーデン結節では指は太くならない。指輪のサイズが大きくなったのは、それこそ老化現象。現実を潔く認めて、手入れのいきとどいた大人の手をめざそう。

 

 

 

2011.5.9