魅せる目・見せない目

普段からお化粧は大好きでマスカラはギャル並みに2種類を使い分ける。まつげのエクステをしてみたこともあるし、まつげパーマもかけている。だけど、ツケまつげだけは未経験だった。

ベリーダンスの発表会が近づいたある日、舞台メイクのレッスンがあった。リキッドのアイラインを太々と引いたつもりで先生を見ると「もっと太く!」10m離れて見てもハッキリした目を作るのだとか。アイラインは自分の目の大きさを無視して、瞼の二重の幅ほども太く、しかも目尻をキュッとつり上げて描く。目の縁から遠く離れた、そのアイラインに合わせてツケまつげを貼る。ちょっと上を向いて鏡を見下ろすと、自分のまつげとツケまつげの間に黒々とした暗黒地帯が出現していた。目はひと回りもふた回りも大きくなった。調子に乗って、2組入ったまつげのケースからもうひと組を取り出して重ねて貼った。鏡の中別人の顔がある。こんな目、見たことがない。ちょっと、良いかも。眉毛も大きくなった目に合わせて長くハッキリと描き足した。口紅もクッキリと赤く。チークもたっぷり。なんだか楽しくなって来た。遠目に見るんだから顔なんて見えないし・・・と思っていたのが嘘のようなハ イテンション。脳の中で血液が歌いながら駆け回っている。週3回のレッスンには必ずこのメイクで出かけた。やればやるほど面白い。そのメイクをしたとたん別世界の住人になれる。こんな楽しいことはない。メノポなんて吹っ飛んでしまう。

 

発表会当日、まつげはシルバーラメを1枚追加した。目頭と目尻にクリアーなラインストーン。瞼の上にはブルーのラインストーンを並べて貼ってみた。楽屋ではあせって上手く出来ないだろうから、メイクは家で済ませて出かけた。魅せるつもりの目は、さすがに街中では気が引けて見せられない。大きなサングラスの下には、もう一人の私の目が隠されている。

 

 

 

 

 

 

 

 

2010.3.23