献血で、ほんのすこしのご恩返し

私の次男は生まれてすぐ、新生児特有の病気でかなり危険な状況に陥ったが、すぐに輸血をしていただいたお陰で、幸せなことに順調に成長していった。そのことをきっかけに、感謝とお礼の気持ちを込めて、意識して献血に行くようになった。若いころから貧血気味だったので血色素量が足りなくて採血できず断念して帰ることも何度かあったけれど・・・。

その後持病の為いくつか薬を常用していた間は献血ルームとは縁が無くなってしまった。

献血カード

しかし数年前、薬を辞めて献血に問題なしの状況になり、有楽町交通会館にある献血ルームに初めて行ってみた。最後の献血から10数年経過。そこで驚きの光景を見ることに。

華やかな都心という立地条件もあるかもしれないが待合室は落ち着いて明るく、爽やかな空気が漂い、その奥にあるベッド仕様の椅子の並ぶ献血室は全面ガラスで天井も高く、更に広々としていて窓外の景色も気持よく、とてもとても開放的。まるで浦島太郎の気分。

更に多くの若者たちが結構時間のかかる献血の為にわざわざ上階のこの部屋に足を運んできている姿に、優しさ頼もしさを感じ、とても心が温かくなった。かつて自宅近くで献血していた時はひっそりとした設備で静かに作業が行われていたような気がしたが、今は看護師さん、献血に来ている人も本当に自然体でにこやか。

そして、数日前、今年初の献血に行ってみて、今度は別の意味でびっくり。事前検査で「血液濃度が非常に良いですね、400mlの献血でよろしいですか?」と言われたのだ。こんな事は初、O型の誰にでも提供できる即戦力のそのままの血液は貴重なのだろう。
今までは時間はかかるが身体に負担の少ない成分献血か200ml。今回はその基準をクリアしたらしく、思いがけず現在の健康に太鼓判を押されたみたいで嬉しくなって順番を待つ。待合室には飲み物や簡単なおやつなどと一緒に待合の時間に読める雑誌なども沢山用意されていて、至れり尽くせり、待っている間もゆったり気分。

献血カード

さて、いざ献血が始まって、本を読み始めたと思ったら、「はい終わりました」「えっ、もう済んだのですか?」「何だか血液の流れがとっても良かったみたいですね」と。

またここでも大丈夫!と背中を押された気になり、ふらふらするどころか足取りも軽い。

本当は私、注射器の針は怖くて見られない、勿論自分の腕に刺さる瞬間なんて直視できない、いつもあらぬ方向を眺めて意識をそらし、自分の血がチューブに流れて入ってゆくところも見ていられないので途中の様子は全くわからない。それでも献血は結果的に自分の体とも向き合う事になり、助けていただいたほんの少しのご恩返しという、自分へのささやかな充足感をもたらしてくれる。69歳までとの年齢制限がある献血だが、まだ少しでもお役に立てることが嬉しい。

これまで生きてこられた感謝をこめて、まわりに何かをするということは巡り巡って支えられていること、一人の大人として社会にご恩返しする方法や形はまだまだいろいろあるだろう、がんばろう。

 

2014.1.16