香り高きコーヒーを!

幼なかった頃、今は亡き父が火にかけていたパーコレーターのポコポコというリズミカルな音に伴ってふわりと漂う不思議なコーヒーの香りに、「これっていったい何?」と見たことも無い海の彼方の文化の薫りに驚きを感じたものだった。そう、あの頃から私はコーヒーの香りの洗礼を受けて育ってきたのだ。この香りにホッと心いやされるルーツがもしかしたらそこにあったのかしらと、今になって思う。

クレインポット
クレインポット

結婚して、サイフォンやドリップセットを揃え、手動のミルでその都度豆を挽き、コーヒーを楽しむために抽出していたのに、この何年かは電動ミルで豆を挽き、電動コーヒーメーカーが勝手にいれてくれるコーヒーを当たり前のようにだらだらと飲む日々だ。「とりあえずコーヒー」ではなく、「優雅に美味しいコーヒーを」と思い立ち、あるコーヒー豆メーカーの「本格的コーヒーを楽しむセミナー」という教室に参加した。

 

4回のレッスンで、豆の基礎知識から、おいしいいれかた、産地別味わい、焙煎とブレンドの方法による味の違い、アレンジコーヒー、デコレーションコーヒー、コーヒーに良く合うスウィーツなどなど、毎回楽しくもあり緊張する実践も。まずは器具を全て温めて準備、常にお湯は沸騰状態で使用、ペーパードリップの抽出は、注ぎ始めの1回目、20秒待った後の2回目からは粉の膨らみ具合を見て5~6回に分けて注ぎ入れ、3分間で人数分だけきちんと目盛りで確認して落とすという基本がとにかく大切。ただしお湯を注ぐ高さ、タイミング、お湯の量などで微妙に変化し、一人分の少量抽出は特に高難度。

ホット・モカ・ジャワ
ホット・モカ・ジャワ

先生は、細かく白い綺麗な泡をぷっくりと膨らませきっちり3分で芳香美味、その美しくなめらかな動作は手品師のようで、いざ自分もとやってみると力が入りすぎたりして・・・。皆同じようにいれたつもりでも飲み比べると、時間が早いと酸味が強く、タイミングが悪いと苦みや雑味が出てそれぞれ異なり、わずか水とコーヒー豆だけのシンプルさなのに、バランス良く美味しくいれるのは難しい。コーヒーの奥深き魅力を知った実習だった。

 

芳醇な香りに包まれた魅惑的な味の琥珀の液体を、自分の為、誰かの為に愛をこめて美味しくいれたなら、ゆるく穏やかな時が流れて、微笑みが広がる空気に包まれていくだろうと楽しく思い描いて、クレインポットとドリッパー・サーバーの大小のセットを気持も新たに揃えた。さあ、香り高き美味しいコーヒーで上等なひとときをご一緒に!

 

コーヒーの知識をほんの少しだけ手に入れた。こんな些細なことでも脳は喜び、心には音符マークが踊っている。こんなことの積み重ねもきっと心のアンチエイジング。

 

先生の講義の最後の言葉、「まだまだ難しいと思ったら、もっともっとコーヒーを美味しく淹れられるようになります! 頑張って。」

まさに、これからの人生でも、もっともっと! 知りたいことはまだまだいっぱいある。

 

2011.3.1