シャーリー・マクレーンのような、チャーミングな50代

ある講習会で、とてもチャーミングな女性に出会った。たぶん彼女はそこに集まった人達の中では最高齢だろう。小柄だが均整のとれた、いわゆるトランジスターグラマーな肢体に長い睫毛の愛くるしい顔立ち。私の彼女の第一印象は「フランス女性のよう」だった。また、シャーリー・マクレーンに似た瞳を持つ彼女は、どこか霊的な世界を私に感じさせた。

シャーリー・マクレーン
http://www.mahoroba-jp.net/newblog/?p=625

ある日一緒に駅までの道を歩いた。 すると彼女は「私、ちょっと変な人なの。『魔女』なんて呼ぶ人もいるわ!」と、話し始めた。

料理人のご主人と青山で長年にわたり、ワインバーを開いていたのだが、ご主人が友人の保証人になったことから億の借金を抱えてしまった。

その後、ご主人とは離婚したのだが、お店を続けた彼女は彼の借金を負うことになる。そして、みごとに払い終えたのだ。しかし、3年前のある日から、次々と不可解なことがお店で起こり始めた。

半年悩んだ末にお店を閉め、実家のある故郷に久しぶりに帰ろうか、と思っていた矢先に東日本大震災が彼女の実家を襲った。

福島県南相馬市の実家も10数軒の親戚の家も、海に呑まれた。

彼女が卒業した看護学校も津波に拐われた。看護学校卒業時に、彼女に求婚をした男性の一家も、皆、帰らぬ人となっていた。「もし、彼と結婚していたら、私も海に流されていた。もし、あと何日か早く実家に帰っていたら、私も死んでいたと思うと恐ろしかった」と。

南相馬から帰った彼女の顔は腫れ上がり、知らないうちに付いた引っ掻き傷だらけの身体は鉛のように重く、起き上がれない。知り合いの神主さんに相談し、お祓いをしてもらってなんとか元気を取り戻した。たくさんの霊がとり憑いていたようだ。

憑き物を落とした彼女は「もう一度、看護師をしよう!」と心に決めた。

看護師の仕事は19歳で結婚をする前にしていたのだから、36年もの長いブランクを経ての復職である。彼女がお店を閉めたのは、次の使命を授かるためだったのか。

「ヘェー!」と感心している私に追い討ちをかけるように、彼女の話は続く。

「私、離婚して借金払いながら、気分転換にダンスを習ったら、先生の男性と気が合っちゃって18年も一緒にいるの」と。8歳年下のモテモテダンス教師の彼も好きだけど、別れた料理人のご主人のことも嫌いになったわけではないから、今も時々子どもたちと一緒に会っているのだとか。

きっと彼女は天女の生まれ替わりなのだろう、と私は思った。真の癒し系女子といったところか・・・。いくつもの試練を乗り越えながらも、女性の魅力を失うことなく、自分を含めたみんなを幸せにしていくって凄いことだと思う。なんとたくましく、なんとかわいらしい女性なのだろう。私には天女の片鱗は微塵も無いけれど、同じ50代女性の後輩として、大いに彼女を見習って、真の癒し系女子に少しでも近づきたいと思っている。

 

2013.10.18