坂道アスレチック

坂道

私のアパートのベランダの前はかなり急な坂道だ。坂道の両側には手摺りが張り巡らされ、中腹に立ち並ぶ高級マンションの住人たちをサポートしている。窓からは坂道を上る人の後ろ姿、そして坂道を下る人を正面から眺めることができる。
この人間ウォッチングが結構おもしろい。

 

最近では、紅茶カップを右手に持ち、トーストをかじりながらの人間ウォッチング坂道編が毎朝の日課となってしまった。

 

幼い姉妹が子犬のようにはしゃぎながら、ターッと駆け降りて来る。ハラハラしながら見ていると、案外無事に坂を下り切っていく。 髪に白いものの混じったおしゃれな女性が、ペタペタと両足を完全にハの字に開き切って、少々ふらつきながら小走りに坂を降りて来る。 先ほどの幼い姉妹の地べたをしっかりと踏みしめる様子とは随分違う。

 

「私もあと数年したら、あの女性の様な足取りになるのかしら?」「いや、まだまだ、そんなことはありませんヨ!」などと、人様の歩き方を見ては自分に置き換えてアーダコーダと考える。

 

老化は脚から、と言われている。中高年の脚力強化には平地を早足で歩くことよりも、坂や階段を上り降りすることの方が重要だとか。小学校の遠足で高尾山を登った時の快感からか、坂道や階段を上るのが好きだ。急斜面を見るとワクワクして、上らずにはいられない。駅の長い階段を足早に昇り、エスカレーターに乗っている方々を追い抜いた時などは「イェイ!」と心の中で呟いてしまう。


毎朝坂道を上って駅まで行くので、朝夕で毎日最低3回(駅の上り階段2回+上り坂1回)はちょっとしたワクワク感が得られていることになる。気分が落ち込んでモヤモヤしている時は、駅から家へ直接帰らないでグルーッと遠回りする。近所の急な坂道や階段を上ったり降りたりしていると、どこからか活力が湧いてきて、「もう大丈夫、家に帰ろう!」と思えるから不思議だ。

 

どうやら坂道や階段の上り降りは、私にとって最高で最短の気分転換の時間のようだ。日々のモヤモヤ気分を吹き飛ばしてリフレッシュし続けることこそが、私にとって重要なアンチエイジングなのだ。

 

 

2009.7.1