祝、敬老!

ひょんなことから、友人と二人で麻雀を教えてもらうことになった。麻雀の牌を、直接見たことも触ったこともない私にとって、それはまさに晴天の霹靂(ヘキレキ)とでもいえるほどの非常事態。「絶対に無理! 覚えられないに決まってるから!」と叫んだが、強引な性格の友人に聞きいれられるはずもなく、もう一人の友人と一緒に習うことになってしまった。

 

「これ、読んでおいて!」とPCでダーッと訳の分からない記号や単語が詰め打ちされたA4版の紙を1枚渡されたが、読んでも理解できることはなにひとつなく、私は日に日に「覚えられない恐怖感」に苛まれていった。そして、恐怖の実地教習日を迎えた。雀卓を前にして腰掛け、見よう見まねで牌を並べ、いわれるままに牌を動かした。しかし、教えてくれている友人は、むちゃくちゃ早口で牌の動きも早く、教えてもらっている私と友人は目を白黒させて、プリントと牌を目で追うことに終始していた。

 

「たかがゲームじゃないの!」というなかれ。麻雀は頭と指先を使うアンチエイジングなゲームなのですから、これから先のシニア人生に向けて覚えておいて損なことはありません。だから、本当は覚えたいのです。そこで思い出したのだが、私の母は80歳で麻雀を始めた。湘南に転居して、ご近所のお宅の方に誘われて伺ったところ、なんと大広間に雀卓が4台もある豪邸だった。「毎週ご近所の皆さんで麻雀を楽しんでいるので、ご一緒にどうぞ」と新参者の母を仲間に入れてくれたのだ。母は自分で麻雀を打ったことはなかったが、兄たちの打つのを見たことはあったのだろう。その日から、毎週日曜日のお昼頃になるとノコノコと、そちらのお宅へ伺って麻雀をして夕方まで過ごしている。「麻雀どうなの?」と聞くと「全然うまくならない」とぼやいてはいるが、毎週出掛けて行くのだから、それなりに楽しんでいるのだろう。

 

強引な友人のおかげで麻雀の手ほどきを受け始めた私は、今まで縁のなかった麻雀を、急にちかしい存在に感じるようになり、ご近所で誘いあって麻雀を楽しむ母たちを応援したいと思うようになった。それにしても麻雀は私の想像どおり、結構複雑で頭を使うスピード感のあるゲームなのだから、どう考えても思慮浅くスローペースな母にまわりの方々が合わせてくださっているのは確実なのだ。これは、毎週誘ってくださっている方々への感謝の気持ちを表さなければいけない、と思っているうちに敬老の日が近づいて来た。

手づくりカード

さりげなく日頃のお礼をしたいのだが、相手が老人となると難しいものだ。母などは「なにもいらない」といって、食べ物と生花以外はほとんど受け取らない。母は健康で食欲もあるから食べ物でも良いのだが、それもなかなか難しく、生花は男性には難しいだろう。考えたあげく、手づくりのカードを差し上げることにした。

 

母が日頃お世話になっている7人と、ついでに母にも、合計8枚のカードを夜な夜なつくった。女性用はピンクの紙にワインレッドのリボンをつけ、男性用は黄色の濃淡でつくった。色紙をピンキングばさみでギザギザに切り、レースのように抜き型で花模様を抜き、中にはメッセージを書いた紙を貼り、抜き型で抜いた花模様を貼って外側にも花模様を貼り、リボンをつけて結んだ。

 

見ず知らずの私のつくったカードなど、すぐにゴミ箱へと捨てられてしまうかもしれないけれど、それはそれでいい。人生の大先輩へ、感謝のきもちを表したいだけですから。

「祝、敬老!」

元気にスマートに遊ぶ老人をめざして、私たちも頑張りましょう!

 

 

2012.10.3