夏服とドーパミン

近くの欅並木が風に波打って夏がやってくる。そわそわと天袋から衣装箱を取り出して袖のない服を取り出す。そこで、ですね。出てきた夏服に袖を通してみるわけです。

 

思い出の詰まった服はなかなか捨てられず、今年も着られるかをわざわざ着て見て確認する。最近の問題は背中の肉で、そう太ったわけではないのにブラの紐周りがぷにっとすることがある。

 

それはそれで風情があってよろしいという人もいるけれど、そこは抵抗したいところ。


「若い娘が美しい素肌をさらして歩くこれからの季節、いったい誰が中年女の背中の肉なんか気にするものか」 という至極まっとうな意見も聞こえてこようというものだが、人から見られることが少なくなっているこの年代こそ自分でチェック。モデルが自分ならば観客も自分、もはやココロの問題なので、自分で自分にドーパミンを出す。

 

若い頃は見られるのなんて恥ずかしくてイヤだった。出社時に、遠くから「おっ、新しいワンピースだね」などと上司に声を掛けられただけで軽いセクハラくらいに感じていた。今なんて、身につけた白いスカートを毒蝮三太夫にでも誉められたらうれしい。

 

50歳になってみれば、遠くの夏服の女性を目を細めて見ている中高年の男性は「軽いセクハラ」などをしているわけではなく、 自らにドーパミンを出させてくれるものが好きなだけなのだとわかる。女性が、欅並木が日に日に葉の色を濃くしていくのを見て快いと感じるように。

 

ドーパミンはエストロゲンの減少に歯止めをかける働きをします。快い、と感じるとドーパミンが分泌されます。ドーパミンをよく分泌していると若々しくいられます・・・そんなことを聞きかじった。 また、ドーパミンとは逆にセロトニンという物質が程よく分泌されているとストレスに強い安定した心持でいられるらしいことも。

 

ブラの紐周りがぷにっとした人が一生懸命ゴボウを洗っていたり、オフィスでバリバリ指示を出していたりしているのは、それはそれで風情があってよろしい。 というのは、それはきっと「背肉がぷにっ」がセロトニンの正常な分泌を連想させるからなのでしょう。 とはいえ、この「ぷにっ」はどうするんだよ、と自分に突っ込みを入れてみる。

 

 

2009.6.1