揉まれる・ほぐされる

駅から事務所までは約800m。その間に、マッサージ、カイロプラクティック、鍼灸、エステ、整体、アロマテラピー、整骨院、等々がひしめいている。保険の効くところからリラクゼーション目的のところまで。 この不景気につぶれもせずにいるところを見ると、本当に世間の人は疲れているのねと思う。

 

そういう私も肩こりがひどい。マウスを握り続ける仕事のためだと思うが、休んでいるわけにはいかない。 昨年まで駅前のカイロプラクティックに通っていた。施術は、約40分間の全身マッサージと腰や首の骨の歪みをボキッと整えるもので、それが終わる頃には首にねっとりとまとわりついていたどろりとしたものがすうっと流れ去るのを感じた。まさに快感。 カラダが整ったように思ったし、実際にしばらくは肩こりから解放され、軽快でいられた。


ところがある日、担当の先生がいなくなってしまった。遠いところで新規開業するとかで、その日から私は肩こり難民になってしまった。新しく探した先生は、カイロでボキッと骨の音がするような治療はヨロシクナイのだと言った。 なぜイケナイのかの説明をしてくださったので納得はしたが、その先生のところでは私の肩こりは一時的にでも良くはならず、2回通院で止めてしまった。


次に探した先生はスポーツトレーナーもしている柔道家の先生だった。 施術後、揉み戻しがひどく、3日間肩の痛みが取れず通院をあきらめた。半径1kmの円の中におそらく100軒以上の施設があるのに、私の肩はこりこりのままだった。

 

「何事も相性があるようです。受けていた治療を否定されるのはつらいです。自分に合った先生を探す旅の途中なので、その人に巡り合うまでは旅を続ける覚悟です」と、4軒目の先生の問診のときに私は言った。ところが、その先生が私にぴったりだった。
「旅はやめたのですか」、「いえ、ちょっと寄り道が長くなっているだけです」。
先生はニコニコと笑っている。

 

楽しく生きたい。30代の頃のように働いていたい。けれど、どうにもカラダがついてこないことがある。 それをカバーしてくれる技術を持った人を探すのも私にとっては大切なアンチエイジングの一つだと思っている。

 

 

2009.5.1