知性とキレイは、インテリアにでる。

私は、大のインテリア好きである。今のインテリアコーディネーターという仕事を選ぶずっと前から、好きだった。18歳になり、一人暮らしを始めてから、ウン十年。映画を観れば、主人公の立ち居振る舞いより、その背景のインテリアに全神経が集中する。カウチ、カーテン、調度品、シャンデリア、壁紙、ドアノブ、ダイニングテーブルの上に活けられている花まで。それそれは舐めつくすように、真剣に観てしまう。

 

書店に行けば洋書コーナーに自然と足が向き、インテリアボーグ、エルデコレーションなどなど西洋のインテリア雑誌をこれまた片っ端から立ち読み。正確に言うと「立ち見」していた。

 

とにかくインテリアのビジュアルを眺めているだけで、幸せなのだ。いろいろ眺めていると自然に、このインテリアはきっとこういう趣味の、こういう生き方をしている人が、こんなふうに住んでいるのでは? と創造力もマックスになっていく。

 

昔、夫の仕事で、しばらく外国暮らしをしていたことがある。その時、ちょうど息子が現地の私立の小学校に入学した。私は、外国語がうまくない。5歳の息子も、もちろんだ。夫はほとんど留守がち。まず、言葉ができないということは「IQを疑われる!」。何を話しかけられても、ただニヤニヤ、口を半開きにして、首を縦に振るだけ。この親子、大丈夫? と思われてしまうのだ。

 

こちらは少しでも早く、息子を現地の学校になじませたい。早く、いっぱしに、この学校の父兄ソサエティーの一員になりたい。そういう、母親としてあたりまえの、そして性急な願望がムラムラとわいてくるのを抑えることができなかった。そういう、ある種の窮地に立たされると、私は強い。そう~だ! 早い話! 我が家に、いろいろな家族をお招きしよう!よく、西洋映画を見ていると、出てくるシーンではないか。その国のソサエティーとのおつきあいは、そこからしか始まらないのだ。

 

異国に引っ越してきたばかりなのだから、もちろん家具などは持っていない。ここは、息子のため、すべてを買いそろえることにした。家具の専門店、アンティークショップ、カーテンの専門店、デパートの家具売り場、照明の専門店・・・ どんなに見て廻っても、楽しくて楽しくて、めくるめく日々が過ぎていく。しかし、ボヤボヤしてはいられない。ひと組でも早くお招きして、親しい関係をつくらなければ。我が家にお招きした家族が、この日本人ファミリーは、「つたない言葉しか話せないけれど、なかなか趣味も悪くないじゃないか。けっこう知的なのかもしれない」と思ってもらいたいのだ。そうすれば、この知り合いのいない街で、なんとかやっていけるのではないか。

私は、インテリアをどんな感じにしようかと考えた。これは私の本業であるインテリアコーディネーターとしての、仕事だと思えば、お茶の子サイサイ。頭の中に、「インテリジェンス」「清潔感」「品質感」「素材感」「ややアールデコ」などなどのイメージが浮かぶ。彼らに、どういう印象で受け入れられることが、わが家族により有効なのか。我々のイメージをどうつくるかなのだ。

 

そして、いよいよ、ホームパーティの日。まとめて、2組のファミリーをお招きした。ひと組はドイツ人ファミリー、もうひと組はイギリス人ファミリー。彼らは、この日本人がどんな趣味のインテリアの中に住んでいるのか、どんな文化レベルなのか、要するに値踏みをしている様子がチラチラとうかがえた。

 

「ワンダフル!」「あなたのお料理も、インテリアも、とても素敵でした!」「今度は我が家にご招待しますから、ぜひいらしてくださいね。」といって、彼らは帰っていった。ほッ~、合格ですね。

 

この日以来、私は次々に、さまざまな方々をお招きした。半年もたったころ、すっかり、おつき合いのネットワークはひろがっていた。私があい変わらずつたない言葉しか話せないなんて、ほんと、びっくりな話ではありますが。

 

異国にいて言葉を流ちょうに話せない場合、その人がどんなに美人でも、素敵な装いをしていようとも、それだけでは相手にはどこの馬の骨かわからないという気持ちは払しょくできないのですね。お化粧や服装だけでは、大した説得力にはならないのですよ。しかし、家に入るとわかってしまいますよね。その人のかなりの部分がその家の中、部屋の中には反映しているのですから。

 

みなさま、異国で「自分流のきれい」をアピールしたい場合は、ご自分の顔やヘアスタイル、ファッションより、まずはインテリを磨くことですよ。

 

余談ですが、例えばアングロサクソンの男性は、東洋人女性のイメージは「色黒、鼻ぺちゃ、6等身」なのです。犬で例えるなら、我々は柴犬です。この種はアフガンファウンドにはなれません。でも、純血の柴犬にしかない魅力をたっぷりと持っています。自信をもちましょう。

 

2010.5.31