日本人は、本当に民主主義の中で生きているのだろうか。

 

 

 

   2020.05.16

コロナ戦争の中で、我々の時間は停まっている。だから、普段とは違う会話も家族内で 生まれる。

「民主主義」とは「国のあり方を決める権利は国民が持っている政治体制のこと」と リサーチしたら書いてあった。

先日、6年間アメリカに暮らしていた息子と食事をしながら、「アメリカと日本の違い」につ いて、カンカンガクガクお互いの意見に熱が入った。 いずれ、アメリカに戻りたいと言っている息子に、「あのトランプさんが再選でもしようもんなら、ますます、アメリカは住みにくくなりそうだネ」と。あまり深い意味もなく、軽い気持ちでの私の発言だったけれど、意外にも、息子から真顔で以下のようなリアクションがかえってきた。

「今のこの日本、清潔で、人々は親切で、日本食は美味しく、比較的安全な国、それが日本の 代表的イメージだよネ。そして、だれも、強い発言をしない。まあまあ、みなさんが良ければそれで、イイです!みたいな、生ぬるい感じ。街を歩いている人々は、みんな無表情な顔をしている。幸せに対しても、不幸に対しても不感症になってる感じ。だから、出生率も上がらないんじゃないのかな」と。

確かに言われてみれば、そうかもしれないと思う。ひたすら日本で暮らしていると、慣らされてしまって気づけないことが多いのかもしれない。そもそも今の日本、民主主義国家!と言えるのだろうか。投票率は平均50%。二人に一人は、自分で代表を選んでいない。今回のコロナウイルスとの政府の対峙の仕方についても、検察庁法案改正案(検察官定年延長)などについても、そうだ。「えっ、それはないでしょう!」という方向にどんどん進んでいく。移民が少なく、肌の色がほとんど同じ国。周りはすべて海で、他国との陸つながりの危機感を持たなくてもイイ国。そういう条件を思い浮かべ始めたら、結局、日本国民は狭い池の中で泳がされていて、私たちは、こんなにスイスイ好きなように泳げる!なんて自由なんだろう!と思い込んでいるだけなんじゃないだろうかと思えてきた。

自由ってなんだ!何も規制されていないと感じること?それは、自由じゃないんじゃないか。はたまた、不自由と感じて、その苦しいバリケードを破って、自分なりに自由を勝ち取ること?そうだ、そのとき人は初めて自由になったと感じる。そういうものではないだろうか、自由とは。

息子はこう続けた。アメリカは二つに分断されている。共和党と民主党、白人社会とマイノリティー、富める者と貧しい者。だから、魅力的なんだ。みんながそれぞれに乗り越えなければならない壁を抱えていて、それを乗り越えて分かち合おうとする意識を持っている。あの国の民主主義は、アメリカ国民、一人ひとりが自分たちのために、努力してつくろうとしているんだ。そこが、何もしない日本人と大きく違うところなんだよ。だから、トランプ大統領が再選したとして、ダメージはあるけれど、アメリカ人の心情は、政治では変えられない、と。

私は、アメリカで暮らしたこともないし、アメリカ人の友人はほとんどいない。しかし、彼のやや抽象的な話からも、アメリカという国の深さが少しわかった気がした。同時に、民主主義の真のリアルな意味と意義も。

家族とおしゃべりを分かち合うのも、たまにはイイものだ。 それにしても、息子もオトナになったナ。

タナカキヨミ