「待ってました! 羽織の出番です」

▲前回登場の大島乱菊、 黒羽織りをプラスして少し控えめに。 米沢のお召しの着尺地を羽織りにした。
▲前回登場の大島乱菊、 黒羽織りをプラスして少し控えめに。 米沢のお召しの着尺地を羽織りにした。

前回、夏っ子の私ですから夏が去るのは淋しいと書きましたが、着物のコーディネートを考えるとこれからが最も張り切りがいがある季節。過ごし易い秋の陽射しや風の中にも冷たい空気を感じたら、羽織の出番。紅葉から桜の季節まで楽しめます。

 

羽織はジャケットやカーディガンに当たり、洋服で羽織りものが欲しくなったら着ます。 コートは訪問先の玄関口で脱ぐのが礼儀ですが、羽織はそのままお座敷までも大丈夫。 但し、お茶席にはタブーです。

 

それにしても着物には、いつ誰がそんな事を勝手に決めたの?と思う様な決まり事が沢山あるのですが、それをたどって行くと昔の日本人のすばらしい心を改めて知り、教えられ、気づかされる事が多々有ります。 固っくるしい、と一言で片づけていたことでも納得することが沢山。

一部の呉服業界や着付け教室の利潤追求の仕掛けに踊らされる事なく、賢く楽しみたいものです。

 

羽織は江戸時代には女性の着用は禁止でした。深川の芸者さんが旦那さんのを借用して着始めたのが始まり。

江戸時代にはシャレ者の男性の間で、着物丈と同じ位の長ーい羽織も流行ったそうですよ。 着脱が自由で防寒に優れ、おしゃれ感を演出出来るので一般女性にも人気が高まりましたが、明治にはいって四民平等が唱えられ、 やっと身分性別関係なく誰でも着られるようになったのです。

防寒、防塵としてだけでなく、大正ロマン風に装う為の必須アイテムでもあり、後ろ姿の女っぷりも格段に上がります。帯の乱れ、体形の崩れも隠してくれるので、安心感があって私は大好き!!

▲紋の位置にうさぎさんを付けて後ろ姿のポイントに。 振りからのぞく襦袢の色も計算に入れてチョッピリだけ色気を。  お草履がお行儀悪かったですね。失礼しました。
▲紋の位置にうさぎさんを付けて後ろ姿のポイントに。 振りからのぞく襦袢の色も計算に入れてチョッピリだけ色気を。 お草履がお行儀悪かったですね。失礼しました。

更年期障害で腕が背中に回らないので帯結びが上手く行かないと言う人も、羽織をはおればなんてことない。使わないとよけい衰えるだけですよ。かなり個人的な意見ですが、日本という四季のある国に生まれながら、着物を着ないで一生を終わるなんてすごく勿体無いと思います。ちょっとだけその気になれば違う自分になれるのに。

 

そんな着物にも流行があり、色、柄、着丈、コーディネートはその時代時代の特色があります。私の母の子育て時代、つまり私がまだ可愛い素直な子供だった頃のお母さん達は、卒入学式等に参列する時は一つ紋の黒羽織姿が主流でした。小紋の着物にそれを羽織ると略礼装になったからです。

 

母は生まれ育った富山県で女性で二番目に車の運転免許を取得したり、ミセス何とかに選ばれたりして、洋装もとてもモダンで、彼女が授業参観に来ると内心友達に自慢でした。そんな母の黒羽織姿が何となく一段とキレイだったのを想い出します。

 

今、その頃の羽織や道行き等は色柄は何とか我慢出来ても、着丈が短くて野暮ったく感じられます。その頃の時代の気分が利便性を求めていたので和服にも軽快感を表現したのでしょうけれど。

なんと、あれから早40数年!?年齢を重ねたお陰でいつの間にかこんなに着物を楽しむ事が出来る様になり、羽織も江戸小紋の黒地鮫小紋、霰、茶地の流水、縞などに加えて黒無地の長羽織も作りました。母の時代より30センチは長い丈。自分ではとてもシックでカッコ良いと思っているのでこれを羽織るのが楽しみなんです。

 

*写真はあえて前回も登場の泥大島乱菊に羽織って着物も何通りもの着回しをするという一例。

 

***お知らせ***

 

『奄美の地・血・智 第2弾』 大島紬の製造を核に、奄美大島にはタイムカプセルに閉じ込められていたかのように日本の心が残っています。かろうじて受け継がれている伝統を皆さんに知って貰いたい、 日本の、地球の色を見て貰いたい、守っている人の事を知って貰いたい。 それらはとても大切なものだと思うから。

 

1200年受け継がれている大島紬の黒褐色を出すための車輪梅+泥染、阿波藍、 透明度が一番高いとされる琉球藍染めだけで構成したカット&ソー、大島紬のパンツ、 スカート、デニム、ベビイ服、ニット、ストール、コサージュ、ベルト、バック、 等と織り元直の本場奄美大島紬、帯、帯締めその他色々素敵なものがいっぱい。 大島紬の製造工程も是非知って下さい。

 

日時:2009年11月16日(月)~22日(日)11:00~19:00

場所:恵比寿 ギャラリーPOMAR(ポマル) - 渋谷区恵比寿南2丁目29-5-1F

(恵比寿ガーデンプレイス側に出て、右のアメリカ橋を渡って徒歩1分)

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TEL:03-6662-6700

2009.10.22