LA  LA  LAND/ラ・ラ・ランド

2016年のアカデミー賞14部門にノミネートされ、12部門を征した「ラ・ラ・ランド」を、今さらだが、目黒シネマでようやく観ることができた。ロードショー上映している間は、忙しく見逃していて、DVDを借りてくるも、デッキの調子が悪く観られないままに返却。

え~い、こうなったら、せっかくのミュ―ジカルを小さな画面で観ることなど、もったいな過ぎると、密かにどこかで再演されるのを待っていたと言うわけだ。

そして、10日ほど前にようやく観ることができた。ほんとうに、ほんとうに、面白かった。久しぶりにハッピーな気持ちが湧き上がってきた。冒頭シーンの何と、楽しくて迫力のあることか!最近は、CGなどのテクニックを駆使して、画面いっぱいに迫力を出そうとする映画が多い中で、激しいアクションもなく、歌って!踊って!いるだけなのに、あのド迫力はスゴイ! そこから、次々に展開される物語とダンスと歌。

イスの上にじっと座って観ていることが、拷問のように思えた。随所に展開される画面に感じる、この懐かしさは何だろう?路上で、家の中で、どこにもかしこにも、60年代をどこか彷彿とさせてくれる。その懐かしさが頂点に達したとき、それが、新しさに変わった。

な、なんだ、この感じ!この疑問はあとで、判ったのが、監督が「シェルブールの雨傘」「雨に歌えば」などが大好きだったとか。だから、意識して、同じような体感を創り出そうとしていたのですネ。

監督はデイミアン・チャゼル。あのヒットしたドラマーの物語「セッション」の脚本・監督を務めた人だ。「ラ・ラ・ランド」の脚本は実は「セッション」より前に書いていたらしいのです。なかなか、資金が集まらず、後回しになっていたとか。

「ラ・ラ・ランド」のストーリーは至ってシンプル。どこにあれほどのヒットを生む要因があったのだろう。お互い夢を追い求めている男女が冬に出会った。そして、翌年の冬に別れる。5年後再会する。かいつまんで言うとそういう話である。それが、見終わったあとのあの余韻は、かなり奥行きのある映画を観た後のような、胸の奥がいつまでもヒリヒリする。

主役のセバスチャンを繊細な味で演じていたのが、新作ブレードランナーで、不思議な魅力を発揮していた ”ライアン・ゴズリング” である。内面にナイーブさを秘めたジャズピアニストを好演している。恋人役のミア ”エマ・ストーン” も、充分にキュートだけれど、"ライアン・ゴズリング" の魅力はあの映画になくてはならない皺を与えていると思った。

さらに、ジャズピアノ弾きの話だから、ピアノ曲がいちいち胸を打つ。「ミアとセバスチャン」のテーマ曲は、ここのところ、毎日聴いている。そのせいか、いつまでも余韻がおさまらない。

あの映画、とくに終わり方が素敵だった。時として、若さは、情熱的であり刹那的でもある。後ろをふり返ることをしない。気がつくと思わぬ方向に踏み出してしまっていることもある。しかし、それも人生。それも生きるということ。応えはひとつではないということを教えてくれるのだ。ふたりは、確かに愛し合った。その熱い記憶を胸に、また、新しい別々の人生を歩き出す。セラビー!

観賞後、自分の人生に未練無し!と思わせてくれる。

 

2018.2.9