レイチェル&スージー

昨年、NHKテレビの「ワンダー×ワンダー」と云う番組で、北京からパリへのクラシックカー・ユーラシア大陸横断レースを取り上げていました。北京をスタート、モンゴルのゴビ砂漠、ロシア、中央アジアシルクロードの秘境、トルコでは4000mの山岳地帯、ギリシャ、イタリア、そしてゴールのパリへ。11ヶ国14000kmの37日間、世界から98台が参加、壮観でため息の出るようなクラシックカーの冒険レースです。車に興味のない私でさえ、参加するクラシックカーの美しさ、また運転する人、ナビする人のペアの魅力、過酷なコースを乗り越える姿、全てが感動できるものでした。

 

その中に、一組の女性ペアが参加していました。二人は子育てに一息ついた40代後半。家族の送り迎えしかしないような運転暦で、勇気と行動力のあるイギリスの専業主婦レイチェルとスージー。半年かけて車の整備技術を近所の整備士に学び、車は黄色のクライスラープリマス1938年車で、家族に見送られての出発です。何とも品のある軽快で魅了的な二人の個性は、「世界には楽しいことがいっぱいよ~!」と叫んでいるようなレディー達なのです。そんな魅力溢れる二人は車が故障をしても磨いた整備の腕を発揮することなく、誰かが手を差し伸べてくれるのにまかせていたのですが、あるぬかるんだ水の中にはまった時は自力で整備しなければならない状況に。するとレイチェルが現地の人達に囲まれる中、車から降りる前にズボンが濡れるのを嫌ってスパッとためらいなくズボンを脱ぎすて、黒の下着枚でずぶずぶと水の中に膝まで入り見事に直したのです。その様は圧巻、カッコいいとしか言いようがありません。

 

他にも沢山の名場面があり、怪我をしながら数々の困難を乗り越え、参加した車の中で番歴史のある1907年のイタリアの名車"ITARA"でゴールした映画スターの様な素敵なイギリスの中年夫婦。たった台参加したクラシックオートバイは馬力が無く、まっすぐな上り坂を道幅いっぱいに右へ左へジグザクに走行し、どうにか登りきる。どのクラシックカーも慈しみなだめすかしながら参加者同士が修理しあい、助けあい励ましあい、過酷なレースを成し遂げ辿り着く、華やかなパリ市内のゴールゲートに満面の笑顔で駆けぬけて行く姿には感動するばかりでした。今だこの録画はDVDに残し、我家にやって来る誰彼と無く強制的に見せてしまう私のお宝映像です。行動力は人並み以上にあると思っていた私、レイチェルとスージーに続けとばかりに挑戦したいところですが、私の行動力は錯覚。頭の中だけのものでした。ちなみに次のレースは2013年。勇気ある方、応援します。


今回の篆刻百名山は「宮之浦岳」です。

九州最高峰1936mの宮之浦岳は世界遺産の鹿児島県屋久島にあり、この山中には樹齢7000年とも言われている縄文杉があります。年間、北海道から九州まで九名山、利尻岳、羊蹄山、八甲田山、赤城山、富士山、剣岳、霧ヶ峰、大山、そして今回が最後の宮之浦岳です。この中で実際に登山をしたのは家族で利尻岳、高校時代に羊蹄山、夫婦で宮之浦岳ですが、他の山々も刻する前に調べたり想像したりするのは思った以上に楽しいことでした。今回の印を友人から頂いた風情のある丸い手漉きの和紙に捺してみました。


百名山が終了し、次回のテーマは決まっていませんが、篆刻は続けていきたいと思っておりますのでお付き合い頂けると嬉しいです。

 


今回の手作り品はネックレスです。少し光沢のあるビーズ用のベージュの糸に直径4mmの天然石ビーズを、結び玉で止めながら作っていくものです。作業はいたって単純なのですが、テグスで作るより糸は柔らかく肌に馴染み、とても自然で優しい風合いに仕上がります。何気ない感じがとても気に入っています。

 


 

 

 

2012.2.28