庭の巨峰

北国では庭の木々たちが雪囲いに覆われ、雪に備えるそんな季節です。春から初冬まで十分楽しませてくれた庭もそろそろ冬眠に入ります。今年の我家の庭では、今までに無い嬉しい出来事がありました。

二年前の夏の終わりに、ホームセンターで売れ残っていた2本の巨峰の苗が目に入り、北海道で巨峰が育つのかと半信半疑。しかしその時、不思議と手が伸び1本衝動買いをしてしまいました。 庭のサンデッキの1本の柱に沿わせて植えつけ、その年は無事根づき雪囲いをして冬を越し、次の夏には1メートルもなかった苗木がぐんぐんのびたのですが、情けないほどパラパラの実が一房、それでも色づき甘みもありパラパラの一房に感激していました。

そして今年の春、数え切れないほどの枝が勢い良くのび、サンデッキの上に10センチ間隔で針金を張ると、そこを伝い驚くばかりに枝をのばし、みるみるサンデッキの半分を覆うほど葉を茂らせ、あちらこちらに花を付け、慌ててPCで育て方の学習をする事になりました。 にわか知識で枝を剪定、沢山付けた実を20房くらいに残し、一房の上の方につけた実を少し落とし適度な房の大きさに育てるなど色々と手をかけ、とうとう九月終わりには黒々と大粒の巨峰を収穫するまでになりました。初心者にしては大成功と自画自賛。

その20房のなかでも形良く育ったのは10房ほど、あとはパラパラだったり小さな房だったりでしたが甘さもしっかりとあり、なんと言っても目の前のぶどう棚から獲ってきて食する喜びは想像以上でした。 そして何より、収穫するまでサンデッキに下がる巨峰を眺める日々はなんとも格別でした。 夏はサンデッキに巨峰の大きな葉が涼しい木陰を作り、それもまた、よしでした。思いつきで育てた庭のニューフェイス巨峰は庭を眺める楽しみを何倍にもしてくれました。

今回の篆刻は「福良雀」です。

寒さをしのぎ、羽を膨らませ丸くなった冬の雀です。 ふっくらと丸いのは豊かさを表し、良い福をもたらすと文字をあて縁起の良いふくら雀です。印材は2.5cm×1.3cmのいつもの巴林石(ぱりんせき)を使いました。今年もあとわずか縁起の良い文字を鳥の絵はがきに捺して締めくくります。


前回から日本刺繍を紹介させていただいております。 今回は3年前の初作品、アイボリーの地に「雪持ち笹」を刺しました。

最初の作品はとても単純な刺し方でしたが、何と言っても初めて日本刺繍を刺した帯を完成させた喜びはひとしおです。また、色合いが落ち着いているので、きものに合わせ易い出番の多い嬉しい初作品となりました。

雪持ち笹は季節を問わない図柄のようです。雪の重さに耐えながら跳ね返す機会を待つという秘めた思いのある図柄、冬はもちろん夏のきものや帯には涼しさを呼ぶ図柄として使われるようです。


2015.11.26