秋の読書

久しぶりに読書家の友人Mさん宅に伺い帰り際、「時間があったらこれ読んでみない…」と渡された本は、美しいモネの睡蓮の装丁につつましく「ジヴェルニーの食卓」原田マハと書かれてありました。最近は書籍情報にアンテナも張らず、すっかり読書から遠ざかっていた私には原田マハと言う作家も目新しく、何の予備知識もなく「読めば分かる」と言われ、その夜、最初のページを開くことになりました。

その本には、本作は史実に基づいたフィクションです、と但し書きがありました。マティス、ドガ、セザンヌ、モネなど美の巨匠たちが主人公の短編が4作。フィクションとはいえ、実存した印象派の画家たちがリアリティーたっぷりに登場します。キラキラ光る地中海を望む「オテル・レジナ」で過ごすマティス、オペラ座で踊ることを夢見る少女を見守り「十四歳の小さな踊り子」を描いたドガ、セザンヌを絶賛し無償で絵の具を渡す画材屋の主人、広大な光溢れる庭で絵を描くモネ。ニース、パリ、プロヴァンス、ノルマンディーなどを舞台にささやかな幸せを織り込みながら絵描きたちの日々の物語は、思わずフィクションであることを忘れて入り込んでしまいました。たくさんの名画を鑑賞し、時間をかけて美術館を歩いた時のように、心地よい疲れが残る“読む美術館”でした。今まで自宅の本棚に並んでいてもなかなか手に取ることがない、黄ばんだ画集をあらためて開くというおまけ付きにもなりました。

今回の篆刻は、お稽古をするために歴代の篆刻家の傑作を模刻したものです。

お手本は巨匠河井荃蘆の「百錬」です。

どんな小さな欠けや点のような部分も一部始終、残さず真似て刻することを模刻と言います。今回の作品はあまり欠けている部分は少ない方ですが、わざと欠けているようにするのは古色をつけると言い、たとえば発掘された時の印の様子を真似て古さや歴史を感じさせるためにわざと欠き、味を出すのです。

このような多くの傑作を模刻する事が、何より力になり技術を習得する勉強になるようです。古色をつけないのは篆刻ではなく、印鑑になります。月に一度、お手本通りに模刻した印を印箋に押し、必ず褒めて下さる優しい先生に見て頂く楽しみを糧にコツコツと続けている訳です。

今回の手作り品はシューズ・キーパーです。

四万十天然ひのきを使った、たくさんのグッズがセットになった香り豊かなプレゼントを頂きました。その中にひのきを細かく削りパックになった物があり、湯船に浮かべ香りを楽しんだり、靴収納棚に置き消臭したりと用途が書かれてあったので、シューズ・キーパーを作ってみる事にしました。麻の布にアクセントの白い刺繍を刺し、ひのきを中に詰め、麻のリボンで結び完成です。

一日履いた靴にこのシューズ・キーパーを詰めて消臭、除菌をします。玄関に半日出して置いても感じがいいかもしれませんね。


 

2013.10.23