Chapter 18:これぞパリ!Perigotの掃除道具で、日常をエキサイティングに。

北フランス・海辺の別荘改装記(18)

北ヨーロッパも天気がよくなると、毎年わたしはシンデレラになる。でも私がなるシンデレラはガラスの靴も履いていないし、舞踏会にも行かない。カボチャの馬車やネズミの従者が現れる前のシンデレラ。つまりオンボロの服を着て床の掃除をしているシンデレラの私。

そう、この季節はいつも木製の外のテラスの掃除をする。そしてその掃除は毎年、バケツとマルセイユの石けん、そして大型のブラシが三種の神器。暑い週末の午後にショートパンツ姿になり、座り込んでブラシと格闘する。

マルセイユの石けんは四角い石けんの形をしたものもあるが、今日私がつかうのはプラスチックの入れ物に入ったペースト状になった石けんで、これ一つで床も磨けるし、洗濯にも使えてしまうヨーロッパで昔からある優れもののエコ石けん。私はこのマルセイユの石けんを使ってお風呂磨きもする。

バケツにお湯をくんでマルセイユの石けんを溶かして、いざテラスに座り込んでブラシで木の床を磨いていたら、それを見た義父は「君はまるでアフリカ人みたいに床に座って掃除するのだね」と言われて私はびっくりした。

私たちが知っているディズニーのシンデレラは意地悪なまま母に命令されて床に座り込んで床を磨いていた。(そうでしょ?)

だから「私はシンデレラなのに!!」わたしはこれがフツ〜ウの世界共通の床の磨き方だとず〜っと思っていた。

でも義父曰くはヨーロッパで掃除をする時には決して床には座り込まないという。

ブラシに柄を付けて立ったまま力を入れて前に押し出して掃除をするのだという。そう言われてみると欧米ではみなデッキブラシやモップを使って立ったままで掃除している。(ポパイの水兵さんが掃除をするときがコレだ!)デッキブラシでゴシゴシと前方にゴミを押し出したり、モップで床を磨いたりするのが欧州の正当な掃除の仕方らしい。

日本では、和ボウキは横にふってゴミを集める。この日本の横振りほうきシステムのほうがゴミをちりとりで拾うとき拾いやすいから、こちらのほうが合理的なのでは?

そして、日本では小学校の時から這いつくばって雑巾で床を磨く。しぼった雑巾で友達と並んで雑巾がけ競争をした楽しい想い出を思い出しながら、畳に座る日本文化と、椅子に腰掛け床には絶対座らないヨーロッパの文化の違いが掃除の仕方にも影響するのかしら?と、とんでもない事に感心する。

確かに日本方式の床に座り込んでの掃除は本当に腰にくる。この「座り込む掃除」と「立ったままの掃除」の文化の違いが西洋と日本の歳をとった女性たちの足の形や腰の曲がり具合にも影響しているのではないだろうか?これからは自分の姿勢の為にも「立ったまま掃除」をするように心がけよう。

先日パリのオペラ座近くを歩いていたら、素敵なショーウインドーが目に留まり、ついその店に入ってしまった。そこはパリの高級ブティックではなくて、Perigotと呼ばれる掃除、収納道具の専門店。

フランス人デザイナーFrederic Perigotにより創設されたデザイン性のある実用的日常グッズを扱っている店。彼の哲学は「日常をエキサイティングにする事ーなんてことない物を一躍家庭のスターに変身させる事。」


そして、ここのショーウインドーにはシンプルかつ実用的な掃除道具、ブラシやハタキが家庭のスターとなるべく堂々と飾られていた。

https://www.perigot.fr/fr/JUSTE-PROPRE-3.htm

さすがパリ。こんな素敵なブラシやハタキがあったらなんだか毎日の掃除もエキサイティングで楽しくなりそう。そしてこんな素敵なハタキを持った私もガラスの靴はなくても、一躍「家庭のスター」としてやっとシンデレラになれるかもしれない。

ヤレヤレやっと、テラスの掃除が終わった。1年間の汚れがこびりついて滑りやすかった床が奇麗になった。あの素敵なハタキをパリで買って帰りたかった私。でもどう考えても大きなトランクと一緒にこの素敵なハタキとホウキを(たすきがけにして?)かついで電車に乗って帰るわけにはいかなかった。

という訳で、残念ながら今年も私は「日常をエキサイティングにする事」も、「一躍にして家庭のスター」にもなれず、カボチャの馬車やネズミの従者も現れず、素敵な舞踏会にも行けない、、、本当に情けないシンデレラになって床に座ったまま掃除をした。

 

2014.7.30