Chapter 8:窓から見える赤いサクランボ

北フランス・海辺の別荘改装記(8)

フランス語では、「おまけ」のことを「ケーキの上に載ったサクランボ」という表現をする。この家を買ったときの特大の「サクランボ」は海の反対側にある台所の窓から見える赤い灯台だ。我が家からもう一つ上の道の一番の高台のところに、赤い灯台が立っている。

 

夜になるとその台所の窓から、赤と白と黄色の3色の灯がツー、ツー、ツーと瞬くのが見える。そして灯台守の高見台の窓にぼんやりと灯がつく。一人でこの家に来ている時もこの灯台の灯をみると何となく守られているような気がして心が落ち着く。

 

でもある日ふと気がついた、我が家からこんなに良く見える灯台。そこで働く灯台守の人たちは双眼鏡を持って海に浮かぶ船を静かに見守っている訳だけど、彼らの視界にある我が家の窓で私がパジャマ姿でボヤーと灯台を眺めていたら、彼らからも私の事がよく見えるのだ、と。

 

それで、あわてて、台所の窓にアメリカンカーテンをつける事にした。材料は手持ちの物ばかり。我が家にあった白いテーブルクロスが丁度台所の窓の大きさにぴったり。それと庭に生えた笹が6本、細いロープとカーテンの重しは海岸からひろってきた小石。ミシンの直線縫いで簡単にできるこのカーテンで灯台守の人たちからの目隠しが出来た。

 

でも濃い霧の夜にはこのカーテンはいらない。 濃白色の霧のカーテンが静かにしっとりと我が家を包んでくれているから。

 

 

 

 

 

2011.8.30