過ぎ去りた時代に思いを馳せて(1)
気が付けばもう3月。寒い日が続くとはいってもその日差しは暖かく、春を感じる今日この頃・・・。晴れやかな青空に誘われ私は一人写真を撮りに出掛けました。
今回は横浜の山手。しっとりとノスタルジックな歴史を感じさせるこの街に、一人静かに昔の名残を感じ取りながら歩き出しました。最後に来たのはもう10年も前のことでしょうか・・・写真など全く興味のないあの頃。しかし今回はカメラ片手に一人気の向くまま。素敵なシーンを探してみました。
最初にふらりと入った公園。よく見るとバラ園のようです。出番をひそかに待ちわびるその場所はまだひっそりと土色。薔薇のエンブレムをつけたベンチだけが目立ちます。
刈り込まれたバラの間を進むと、そこにふんわりと夢のようなウェルカムボードが待っていました。かつての英国総領事館、「イギリス館」です。
ボードの素敵なお花に引き寄せられ写真に収めます。そして中へ・・・ドアが重い!
思いのほかうす暗いエントランスを抜けるとそこは厨房。そこで目についた物は・・・。
当時大活躍したであろうパネル。各お部屋から使用人に用を伝える代物(名前は分かりません)。その何とも言えぬレトロな雰囲気に異様に惹きつけられました。当時の活躍ぶりを想像すると何だかワクワク・・・。どのくらい頻繁にベルは鳴ったのでしょう? 時には、「何度もうるさい」などと思われることも・・・? 想像は膨らみます。
厨房自体には特に惹きつけられるものはなく、管理人の方がお茶碗を洗っていたりしてちょっとがっかり・・・。早々と2Fへ進みます。どんなアンティークが待っているのか、期待しながら。
見つけました。心惹かれる物。クリン〜っとカールしたおしゃれな手すり。天井のクラシカルな明かりとシンプルなのにエレガントな小窓。それぞれ心地よい歴史を感じます。「一人タイムスリップ」を楽しみながら、その時代に生まれなかったことをちょっぴり後悔・・・。
廊下を歩きながら目に飛び込んできた重厚な扉。当時の生活を思い描きながらそっと開けてみます。そこにはどんな暮らしが繰り広げられていたのでしょう。こうして知らない人達が自由にお屋敷を歩き回ることを想像されたでしょうか? そんな事を考えると少々こちらも気が改まり「お邪魔します・・・」という気持ちで見て回ります。
その中で見つけた素敵なお部屋。美しいシャンデリアとウッディーな窓枠が落ち着いた上品な雰囲気をかもし出しています。
そのゴージャスな明かりを何枚も写真に収めながら、しばしその場に佇む私。
美しい明かりに後ろ髪を引かれながらお部屋を後に・・・。途中、洋の中に「和」を感じさせる丸窓や椿などをながめ、エントランスホールへと戻ります。
正直、ホールのお花は・・・「もう少し華やかでも?」と思いながらもそのウェルカムフラワーに見送られお屋敷を出ます。
お屋敷の外には重厚な門扉。威厳ある魅力的なそのお姿は、しっくりとシャビーな心惹きつけられる風情。歴史の中に「本物」を感じさせられます。
門を出たところでそっとお屋敷を振り返ります。
「本日はお邪魔させて頂きどうも有難うございました。」・・・心の中で囁きながら。
2011.3.8