大人の社会科見学

横浜の夜景

以前からずっと行きたいと思っていたことがやっと実現する日が来た。昔、製菓工場や車の製造工場、国会議事堂などなかなか行くことの出来ない場所への社会科見学に、胸躍らせワクワクした幼い頃の感覚を思いだす。それは、2カ月先まで予約が埋まるという隠れた人気プラン、工場夜景クルーズだ。

 

日没近くの6時半、横浜の美しい眺めを後にして空の色が刻刻と変わりゆくなか出航。白くライトアップされたベイブリッジをくぐると目の前は大きく開けてくる。本牧ふ頭の大型コンテナン船の脇にはキリンの形をしたガントリークレーン群がオレンジのライトに染まり、まるで命を吹き込まれたように生き生きとし始め、その美しいシルエットに心ひきこまれ・・・。と、その余韻に浸っている間に船はどんどん速度を上げて横浜港のシンボルタワーの横をもあっという間にすぎてゆく。

 

船の一番上のデッキに立ち(椅子に座ってなんかいられない、風にかき乱される髪だって気にしないわ)身を乗り出す。右手に電力供給として期待される風力発電機を製造する三菱重工の硬質な明かりの灯る本牧工場を見て、南本牧ふ頭・国際ふ頭の間にかかるクールな南本牧大橋をくぐるとその先はまさに巨大工場プラントが立ち並ぶ根岸湾。東電南横浜火力発電所・電源開発電子発電所の整然としたライトアップに静謐な美しさを感じていると、一転、船が向きを変えるとそこには不思議な光景が現われた。まるでクリスマスシーズンに出現するおしゃれなイルミネーションかと見紛う様な光溢れる世界。あたり一帯が光のお城で埋め尽くされた街といった感じだ。昼間からはまるで想像できない魅惑的光景に感嘆の声が周りからも漏れる。

 

新日本石油根岸製油所

ここは日本一の規模を誇る新日本石油根岸製油所で、220万・周囲12・の広大な敷地には緑があふれ公園工場と呼ばれている、とのガイドさんのアナウンスに納得だ。広い! 岸壁には30万トン級の巨大タンカーも横たわり、その灯りも海に反射してさらに美しい。この光の世界にどうぞ存分に浸って下さいとのことか、船はエンジンを止め、ガイドさんもしばし沈黙、粋な計らいの静かな大人の時間だ。(残念ながらワイングラス片手にとはいかなかったけれど・・・)

ここで生成された石油製品や電力が私たちの生活を支えるエネルギー源になっているかもしれないと思いながら、もう一度光りに彩られた湾全体を見渡した。無機質な工場群が夜にはダイナミックでいてロマンティックに美しく煌めき、全体に調和して存在している姿は新しい発見であり、ときめきの感動だ。

春先に行った横須賀軍港巡りも興味深かったし、今回の工場夜景クルーズ、どちらも船からでしか見ることのできない心躍る体験だった。人生の持ち時間はどんどん減っていくばかり、大人の好奇心に応えてくれる社会科見学は気になったら迷わず参加しよう! まだまだ未知の世界は限りなくあるはずだ。子供の頃の様な純な気持も蘇って、この新鮮な感動や冒険はきっとアンチエイジングだわ。

 

2010.8.30