捨てられない女

大事な思い出の品だからとか、いずれ使うときが来るだろうと思っている品々、いつかまた着る日が来ると思い込んでいる洋服の数々・・・・


今の住まいに移って25年。見た目には綺麗に取り繕ってはいても、25年の間ため込んできたものたちで収納の奥は溢れていて、少しばかりのお片付けでは少しもすっきりしない。何かもやもやとしていた。えっ、私って、もしかして「捨てられない女」だったの?そんな50歳を過ぎたころに、カレン・キングストン著「がらくた捨てれば自分が見える」という風水整理術入門書に出会った。

 

カレン・キングストン

読んでいる途中からもう私は体がウズウズして、片付けを始めたくなったのは風水に特別興味があったからではなく、「捨てることに罪悪感を感じなくていい」という魔法の言葉に勇気を得たからだ。


私たちの世代は、物は大事にとの精神を教えられてきたので使える形のまま捨てるということが忍びなく、子育て中は確かにいろいろなものが後に役に立つことも多かったから。しかし、生活スタイルも、家族構成も変わった。私自身も人生の折り返しを過ぎた。不要のもの、いただきもの、使わないもの、着ないものも、いつか使うチャンスがやってくるという幻想を捨て、それらは単なるガラクタでしかないのだと認め、決別する決心がついた私にとってはこれからの人生を左右する哲学書にも匹敵する本だった。

 

ガラクタが放つマイナスのパワーは恐ろしく悪影響を及ぼし、それをクリアにすることで、新たなエネルギーが入ってくる・・・「ふんふん、そうなのよねやっぱり」。何となく気づいてはいたけれど実行に移せずにいた私の魂にようやく火が付いた。スキーセットにスキーウエア、新婚旅行の記念の品やパンフ類、嫁入り時に持ってきた文学全集や歴史集、絵画集など本類、編み機にオーディオセット、テープ類にお鍋類他・・・それらを手にした時のやさしい幸せな気持ちだけを心に残して、捨てた! まだ完璧には遠いけれども、潔くさっぱり捨てる度にあらゆる事にも潔くなり、様々な執着から解き放たれて心が軽く、生き生きとした自分になっていくことに気が付いた。このころから実際に開放感に溢れて、不思議とハッピーで楽しい事の多い日々なのだ。

 

クリアなスペース(心も)には幸せを引き寄せるプラスのエネルギーが満ちてくる事を信じ、この本を思い出しては「クリアチャンス!」と捨てる作業に取りかかるこの数年。自分はいったい何に縛られていたのだろう。過去の自分? 余計な気遣い? 単なる貧乏性? 捨てる作業を通して自分に何が大事なのか気づき、必要なものはきっと手に入るという前向きな気持ちになって、爽快だ。これは確実に心のアンチエイジングになるはず。
「捨てられない女」ではなく、「捨てる女」になると決心した私。そしてそして、更年期に激減した女性ホルモンは理不尽にも同年代のオジサマたちの3分の1しかないという衝撃的事実に打ちのめされつつも、「女を捨てない」と誓う。

 

 

2010.2.8