子宮を失ってもなお輝く彼女のこと

久しぶりにおしゃべり仲間のナニから電話があった。忙しさにかまけてこのところすっかりご無沙汰していたけど、しゃべり始めると二人でピンポンのように冗談を飛ばす楽しい友人。でも、今日の彼女は開口一番に電話の向こうから明るい声で 「子宮取っちゃったの」の一言。ウ〜ン参った。

 

電話の向こうに返す言葉が見つからず、ちょっと大きな空白があった。

「どうして何も言わなかったのよ、病院に見舞いくらい行ったのに」 

「だめなのよ、あんたが来たら笑っちゃって、せっかく縫ったところがほどけちゃうじゃない」

 

結局、彼女の入院は日だけで済んだが、その後週間の自宅静養。家では重たい物や、階段の上がり下りは禁止。ということで、階建ての大きな家に住んでいる彼女はしかたなく階のリビングのソファーをベッド替わりにして、見たかった映画のDVDを日永一日見て過ごしたとの事。

 

肝心の旦那はいつものようにお出かけで、彼女が床に伏している週間の間もすっかり御不在。家の最上階にあるアパートに住んでいて、食事と洗濯の時だけフラ〜と現れる18歳の一人息子も全くあてにならない。そんな訳でナニの面倒を見る為にわざわざポルトガルから彼女の母親がベルギーに来てくれて看病してくれたとの事だった。

「何もしちゃいけないと言われて寝ているのって退屈なのよね〜。何もしないというのも結構疲れるものだよね〜」

働き者の彼女にはじっとしている方がさぞかし苦痛だったのだろうなと、思わず何故か納得。

 

ベルギーは30歳以上からは年に一度の子宮癌の検査、50歳からは乳癌の検査の保険補助があり、検査費用が安い。癌検査の最新機器が揃った病院があり、癌治療は一般の健康保険の補助がある。知人の日本人女性がベルギー滞在中に癌がみつかり、医療レベルの高さのみならずその費用の面でもベルギーで治療が出来て本当に助かったといっていた。

   
   

癌の事前予防もそのせいか大変普及している。それなので、几帳面な彼女のことだから定期検診はしていたはずなのに、今年検査をしたら子宮にオレンジ大の筋腫が出来ていて即摘出施術となってしまったというのには驚きだった。

 

彼女は最初に妊娠した時の子供に異常があり出産直前に流産した。番目の妊娠で長男が誕生、彼は元気に大きく育っている。が、番目の妊娠の時も胎児に異常があり流産してしまった。子沢山が夢だった彼女。結局、超わがままな一人息子だけでその後は子供が出来なかった。

 

40歳くらいから凄く太ったりやせたりを繰り返したナニはもともとホルモンのバランスを崩しやすい体質でずっとピルを飲み続けていた。53歳のつい最近まで生理が有る人だった。今回の子宮摘出で、彼女はホルモンバランスを急激に崩して、ひどい更年期の症状がではじめた。寝汗とイライラ、そして不眠におちいり、ホルモンを飲んではいるがなかなか症状が抜けないと言っていた。

 

ジュリア•ロバーツとペネロペ•クルスを掛け合わせたような凄い美人。働き者で、社交も料理も上手、しかもポルトガルの良家の出身で凄い財産持ちのナニ。こんな素敵な人なのに、なぜか?亭主はいつも長期出張。しかも彼の浮気好きは誰もが知っている。彼女が一体何を好んで、こんな浮気好きで、出たら鉄砲玉のご亭主と一緒に居るのか、外野の私には本当によくわからない。

 

「子宮が無くなったという事は、もう生理の事を考えなくてもいいし、子宮癌の心配もしなくて良くなった。子宮が無くてもセックスはできるのだから、これからこそ私は楽しむのよ!!」 明るい前向きなナニはこんな事ではへこたれない。

 

ウーンそうか。考え方を変えれば確かにそうかもしれない。それに、もしかして?もしかしたら?彼女に素敵な恋人が出来たのかもしれない。

 

 

2012.8.8