「My Son」サマリー

20代、30代前半までは広告のコピーライターを生業に、

35歳で、「ブランディング会社」を起業。

子供を持つことなど想像もしていなかった著者は、42歳で出産。

徐々に人生観が変わる。

その息子が、1歳になり、2歳になる。

彼は小さな家の中で、6匹の犬猫たちを兄弟に、

想像の翼をいっぱいに拡げて、自分の世界ですくすくと育っていた。

近所のちびっ子たちと公園で遊ばせていても、

息子だけが違う世界にいた。

日本では、こういう子は変わり者だ。

ある日、私の心のつぶやきが聞こえた。

「このまま、地元の幼稚園に行き、地元の小学校に行き、

中学、高校、大学時代を日本の中で過ごす、

それがほんとうにこの子にとって、ベストの選択なのだろうか?」と。

では、仮に、私立の小•中•高•大の一貫校ではどうなのだろうか。

もし、それを選択するなら、2歳の息子は、私立に入るためのお受験幼稚園の、

そのための幼児教室に通わせなければ行けない時期がきていた。

「さあ、どうする?息子の将来は?彼にふさわしい未来とは?」

遊んでいる息子を眺めながら、私は考え悩んだ。

これからの彼の人生に、どんな世界が開かれるかは、親の私たちにかかっているのだ。

日本人はあまりに偏った価値観で、子供の教育を考えているのではないか。

世界は広い、地球は大きい。

我が子の人生のスタートラインが、こんな狭い日本でいいのだろうか。

この広い世界に我が子を導いて行けるのは、親だけなのだ。

インターネットが普及し、英語が世界の共通語になったというのに、

日本の学校を卒業して、どれほどの英語力が身に付くというのか。

これから息子が大人になるまでに、出会う友人も、出会う先生も、

出会うすべての世界があまりに小さいのではないか。

私はもし自分が息子だったら、どうされたいのかと置き換えて考えてみた。

ようやく、私の答えは出た。

「この国を出よう。どこか違う国で息子を育てよう。」

「生まれて来てくれたまっさらな息子のこれからの人生を、広い世界にゆだねてみよう。」

何の裏付けも無い、何の根拠も無い、しかし、私の決意は揺らぎようのない強いものだった。

その決断は、自分でも想像もしないフットワークの良さで着々と現実のものとなった。

行き先は、夫の友人たちもいるニュージーランドに決まった。

開かれた移民の国だ。

住む街は、南島のクライストチャーチ。

ニュージーランドでは、子供は満5歳で小学校へ通い始める。

その時期に合わせて、私と息子は移動することにした。

母や妹たちも説得し、仕事も調整した。

準備の2年半は、あっという間に過ぎた。

途中で、現地の小学校の面接試験も受けさせ、晴れて合格。

「セント•アンドリュース•カレッジ」という名門私立小•中•高の一貫校に入学が決まった。

そうして、母と子の「プチ移住」「プチ留学」は決行された。

東京よりはるかに物価の安いクライストチャーチで、

古くて広い洋館の戸だてを借り、狭い東京での生活にリベンジした。

ほとんど英語の話せない母と息子の、

ハラハラドキドキの「海外暮らし」が始まったのだ。

英語の分からない息子は、入学初日から大パニック。

登校拒否児になってもおかしくなかったが、

しかし、何故か、学校を休みたいと言ったことは一度もなかった。

いま思えば、5歳の息子も、

あの硬い扉をどうしても開かなければいけない、

その向こうに、広い世界が待っていることに本能的に気づいていたのだと思う。

暮らし始めて6ヶ月後には、

息子の前に立ちはだかっていた「言葉の壁」という硬い扉も見事に開いていた。

そして、アインシュタインと名付けたラブラドールも家族に加わり、

私たちは、日本で暮らしていては、

絶対に得ることのできない、異文化の空気をたっぷり吸って、

毎日、驚きと発見の連続で、4年半暮らすことができた。

息子が10歳になる少し前に、帰国。

息子は、通常日本人両親の子供では入れない、

セント•メリーズ•インターナショナルスクールへ転入。

その彼も、2012年の秋から、

ニューヨーク州立大学で奨学金を頂きながら、現代音楽の作曲を学び、

この9月から、世界的に名の知れている

「ジョンズ•ホプキンス大学/ピーボディ音楽学院のマスターコース」に進むことになった。

外国人に話しかけられると後ずさりしていた単一民族幼児から、

「肌の色が違う、言語が違う、それがどうした!みんな地球人だ!」

と言わんばかりの眼差しをもった青年に成長してくれた。

私の「孟母三遷」の旅は、間違っていなかったと思い始めている。

 

 

 

 

 

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タイトル:My Son

著者:タナカ キヨミ

出版社:白馬書店