ジュリエットからの手紙

人生にはこういう事もあるかもしれないと思わせてくれる佳くできたハッピーエンドの映

画です。

(C)2010 Summit Entertainment, LLC. All rights reserved.
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舞台は、イタリアのヴェローナ。かの有名な「ロミオとジュリエット」のヒロイン、ジュリエットの生家がある街です。そこを、ニューヨーカー誌で記者になるのを夢見て働くアメリカ人の主人公ソフィーが婚約者と訪れます。婚約者の彼はNYでイタリアンレストランの開店をまぢかにひかえ、イタリアにはワインなどの仕入れに。そして、ソフィーはそれに同行したのです。

 

彼女は、ヴェローナの観光名所であるジュリエットの生家を訪ねます。実はそこには、世界中から今も、“ジュリエット”に恋の相談をしたい女性たちの手紙が毎日寄せられているのです。1年間に、なんと5000通も。この女性たちに返事を書くために、ジュリエットの生家には、ボランティアで働く女性たちがいました。それを知ったソフィーはその事に心魅かれ、翌日から彼女たちの秘書役をかってでることにしたのです。

 

毎日、ジュリエットの生家に郵便で届き、そしてじかに置いていかれる手紙。それを回収し、整理するのがソフィーの仕事になりました。そこで彼女たちの手紙を集めていたソフィーは、偶然にも、50年前に届けられた未開封の古い手紙を見つけます。その手紙は、当時15歳のクレアという少女が、恋する想いを綴ったものでした。親に反対されている恋を貫けないことに苦しんでいる内容です。その手紙を発見したソフィーは、“ジュリエット”の秘書として、手紙の主のクレアに返事を書く事にしたのです。「たとえ、何がふたりの仲を阻んでいたとしても、あなたのその時の想いは、どんなに月日が過ぎようとかけがえのない尊いものである・・・」と。すると数日後、ジュリエットの家に、イギリスにいるはずのクレアが孫のチャーリーを伴って現れたのです。

 

ソフィーの前に現れたクレアは、65歳の気品に満ちた女性でした。聞くとクレアはその後、結婚をし、幸せな家庭を築いたけれど、今は夫も先立ち、自由に生きているとのこと。それでも初恋のときめきは、今でも美しい想い出として、心の中に息づいている。できるなら、かつての恋人にもう一度会って、あの時の自分の気持ちをつたえたい。だから、イタリアまでやってきた。その想いのすべてをソフィーに語ったのです。ソフィーはその話に共感し、かつてのクレアの恋人探しに同行することにします。ここまでは、あくまでソフィーの初恋物語の様相を呈していますが、そこからの展開は成熟した男女の物語とも言えるのです。

 

クレアを演じるのは、英国を代表する演技派女優バネッサ・レッドグレーブ。バネッサが演じるクレアはソフィーと共に、半世紀の時空を超えて、かつての恋人を探し始めます。その蓋をされたままの時間の中で、埃をかぶり、今にも消え去りそうな記憶を頼りに。ここがこの映画の最大のハイライトだと、私には思えるのです。われわれが、70歳近くになった時、初恋の想いをこれほど純粋に貫けていられるものなのだろうか。震えるようなあの恋のせつなさを毅然として、少女のまなざしを忘れずに演じきったバネッサはさすがです。大女優なら誰もが整形顔になっている昨今、彼女の顔には、素敵な人生を生き抜いた証となる数々のシワが勲章のように輝いていました。同時にソフィーの恋の行方探しも、ときめきの展開に。往年の恋をさらりと、粋に映画にしてしまう。さすが、ハリウッド。老若男女を楽しませてくれる映画です。

 

 

「ジュリエットからの手紙」公式サイト http://www.juliet-movie.jp/

 

2012.1.12