若さを釣る

50歳を過ぎて覚えたことの一つに、釣りがある。映画「リバー・ランズ・スルー・イット」を深夜テレビで見たのがきっかけで、管理釣り場に行くようになった。主演のブラピが竿を振るお姿が、とにかくカッコヨカッタのであります。管理釣り場とは、渓流に魚を放流して安全に釣りを楽しむように人為的に作られた場所で、車ですぐそばまで行くことができる。

5月6月は特に若葉が美しく、普段電気の下で近くのモノばかり見ている眼には素晴らしく新鮮だ。木でつくられた小さな橋などを渡り、木漏れ日の中に魚の背びれがひるがえるのを眺めるのは楽しい。水辺はマイナスイオンの宝庫、らしいがそんなことはどうでもいいと思うほど気持ちがいい。

 

釣りの日はとにかく、一日中遠くを眺めている日と言ってもいい。

 

ルアーと呼ばれる小さなスプーンの形をしたものを釣り糸の先につけて、それを遠くまで投げる。 ルアーはきらきらと光って川の向こう岸近くまで飛んでぽちゃりと落ちる。一呼吸置き、くるくると釣り糸をリールに巻き取る。ルアーは水中を光りながら泳ぐように動き、それに興味を持った魚がパクリとやると魚が釣れるという寸法。

 

魚がかからず、竿先までルアーが来たらまたぽーんと投げ、同じ動作を繰り返す。空が見え、向う岸の森が見え、水面が見え、思わぬ方角で鱒が飛沫をあげてジャンプする。そんなことを幾度となく繰り返しているうちに、あー、もー、オカーサン、なーんもいらない。 こーしているだけで大満足、そんな気分になる。

 

釣れる魚の数は日よってまちまちだが、持ち帰り、料理の上手な男性に桜のチップで燻製にしてもらう。燻製はちょっとレモンを絞れば最高のお酒の肴になるし、保存も効く。釣りに行った日の夜は、横になっても森や水の気配が消えず、一日じゅう外で遊んでいた幼い頃のような深い眠りに落ちることができる。

 

で、なぜそれがアンチエイジングなのかね?と聞かれたらこう答える。

 

釣りは着帽、着サングラス、長そでが基本。それは日焼け対策のためでもある。 なにより、ストレスでできた一過性の縦ジワならたちまち消えてしまいます。

 

 

2009.7.1