赤ちゃんの名前

From 雪

ヴェロニック、エリザベット、アニイ          
ヴェロニック、エリザベット、アニイ          

今年10月半ばに発表された、フランス女性の第一児出産平均年齢は28.1才。また、毎年9月「名前の聖書」と言われている小冊子《l'officiel des prénoms 》が印刷されて、新生児の名付けに利用される為、良く売れる。発刊年前年の戸籍登録が多かった名前を20まで男女それぞれに順位づけして、名前の由来を説明する。それは、地方独特の名前(例:ブルターニュ語名)、メデイアで話題になった(ドラマ、映画、スター等)、あるいは独創的、あまり聞いた事のない名を付けて、子供に夢を託すなど様々だ。友人のお孫ちゃんは、タヒチでの新婚旅行ベイビーで、マエヴァ(タヒチ語で“ようこそ”)と名付けられた。

 ニコラ、マチュー
ニコラ、マチュー

何処の国でも、名付けには“流行”があるが、フランス人の場合は圧倒的・伝統的にバイブルから聖人名をかりてくるのが普通だ。皇室を頂く日本とちがって、欧米には各国別年代呼称「平成」がない。かわりに、カトリック教国では、一年365日に聖人名が付けられている。毎日朝・昼・晩の天気予報と一緒に、明日は聖◯◯の日とかならず伝える。20世紀の間に聖人に叙された神の僕は365人以上いるので、聖人日は、毎年多少ずれて変わる。苗字は実に様々だが、名前の方は、日本語のように漢字で独自性を出すという芸当はできない。聖ミシェル、聖ガブリエル、聖女ジャクリーヌ etc.。例えば、あなたが、イザベルだとすれば、聖名と同じ誕生日ではないのだが、「今日は聖女イザベル記念日、おめでとう。」と祝福される。こんな習慣は段々廃れつつ有るのだが、教会によく出入りする信者の間では未だに生活習慣に組み入れられている。

オードちゃん
オードちゃん

フランスは 他のヨーロッパと同じく、イスラム系移民が400万人もいる。両親がフランスに居住して、フランスで生まれた子供には仏国籍が与えられるが、赤子には勿論、お国言葉の名前をつける。アリ、ジダン、オマール etc. 。去年は、マルセイユで、アラブ名が、トップにきて、いかに移民が多いかを物語っていた。今年は、女性は短くAで終わる名前が好まれている。トップ5位は、エマ(Emma)、Lola、Chloé、 Inès、 Léa,、男の子はナタン(Nathan)、Lucas、Léo、Enzo、Louisの順位で続く。

現在50歳以上の人は、女はマリー、男はジャンと付けた長い名前が多かった。Marie-Odile、Marie-Christine、Ann-Marie、Jean-Paul、Jean-François etc。忙しいこのIT時代には、一語の名前の方が好まれるようだ。

 墓参りの為の鉢植え菊、カーフールの花売り場
墓参りの為の鉢植え菊、カーフールの花売り場

出産があれば、死もまた人間の営みだ。11月1日は、万聖節記念日。諸聖人の祝日、即ち全ての死者を忍ぶお墓参りの日で、日本の「お盆」に当たる。フランスの墓地は、切り花でなく、色とりどりの鉢植えの花を置くのが一般的だが、万聖節には、「菊」の花と決まっているらしく、週の前後一週間は、赤、黄、白菊などの大小鉢植えが園芸店や花屋の店先をにぎわす。フランスの11月は雨がちで、墓に置かれた菊は結構長持ちする。これを月末頃片付けて、淋しい墓地の冬が来る。

フランスの墓地は花鉢でにぎわう。(10月初旬撮影)
フランスの墓地は花鉢でにぎわう。(10月初旬撮影)

生まれて、いつかは親になり、死を見送り、死を迎える。「名前」は本人と他を区別して、自己主張するか、あるいは他と混じり合って存在感を薄くするか、人生の偶然や出会いが決めてくれる。 

 

 

 

 

2012.11.5

花屋の菊。小鉢をいくつか求めてひとつの大鉢に移し植える。
花屋の菊。小鉢をいくつか求めてひとつの大鉢に移し植える。
10月下旬から11月中旬迄、フランス中の市庁舎は菊で飾られる。
10月下旬から11月中旬迄、フランス中の市庁舎は菊で飾られる。

世の中をハスに眺める癖のある自由業主婦。
人間相手だとイライラがつのるので、自然風物を愛でる。
但し仙人ではないので、普通の社会生活に準じているつもり。
フランス在住20年。