ア・ラ・ラ!!

「ア・ラ・ラ」と、上あがりの発声は驚きや喜び。下さがりのトーンで「ア・ラ・ラー」と来れば、良くないことが起きた時、男女共有フランス語だが、俄然女の使う率が多い。日本語だと「まあ」うれしいとか、「やあ」困ったという擬声語のようなものだ。


ある明るい陽のさす朝、鏡の前で「ア・ラ・ラー」と言いながら鏡にぐっと我が面相を近づけて舌打ちする。年齢を重ねつつある、それこそ世界中の女が共通して持つ経験だ。50歳は50歳の顔であって、どうにもごまかしようがない。しかし、若ぶる必要はない。


「いいじゃないか。自然の摂理に身をまかそう」だが、生き生きとしていれば若く見えるのは確かだと思う。だから「お元気そうですね」と言われなければならないと、自分で決めるのだ。自分で自分に責任を持って生きていたら、やりたい事が次々に浮かんできて、表情が豊かになる。自分の名前で出かけられる場があると言う事は、服装も髪型も会話も変わってこずにはいない。誰かさんのお供で出かけるのではない。

ところで、新年早々、私はうなった。ここ数年来フランス第2位の資産家とランクづけされ、ロレアル社(化粧品)株27.48%を所有するベタンクール夫人82歳が、実娘(55歳)から裁判所に訴えられた。「母は専属カメラマンである男に10億ユーロも貢いでいる。娘として見ているに耐えない。」という事らしい。最近の母娘はお互いに口もきかない間柄らしいというトピックスだった。今でも充分知性的な美しさを保っている夫人は財団を指揮して、貧困国の女性援助に精力的な活動・献金も行っているという。

かなりな腕だと評判のピアニストであるこの一人娘が、単に後継資産の心配だけをしているとは思いたくはないが、ちょっとすさまじい話だし、金のケタだけでも上には上がいるものだ。10億€は、1€=130円換算としてざっと1300億円。これだけ支出して もまだ、夫人がフランス第2位の金持と いうのがスゴイ。息を飲み込み「アー・ラ・ラ」。


何が言いたいか。国が違えば人のやる事や考え方も違ってくるが、ともかくフランスは階層の上下は問わず、先ず女であるのを誇示し、男であることを示したがる楽しい世界だ。50歳代で「女」を降りてしまったらまずい。今すぐ、鏡の前に立ち「良い女になろうかな」と自分に言ってみたら、どうだろう。アラたいへん、とたんに新しい靴がほしくなるかも。

 

2009.3.12