「夏休み」

北海道の子供たちの夏休みは、お盆過ぎの17日ころには終り、二学期を迎えます。我家の子供たちが小学生の頃は、毎年夏休みには車にテントを積み、北海道内を周り、途中でひとつ登山をし、3泊ほどのキャンプの旅に出かけるのが恒例でした。

 

ある時、道東のワインで有名な池田町のキャンプ場でのこと。夕方、私たちのテントの隣に大所帯の一行がやって来ました。その一行 17、8名は手馴れた手つきで長いテーブルを組み立て晩餐の準備が始まりました。その手際の良さに見とれながら、我が家はその夜、池田町のワイン城でステーキを食べる予定にしていたので出かけました。食事をしてキャンプ場に戻ると、お隣りからお鍋を持ち私たちに近づく人が現れ、「根室で買ってきた花咲ガニで作った味噌汁が残ったので食べて下さい」と汁の中からあのトゲトゲした鮮やかな赤いカニの足が飛び出したお鍋を頂きました。思いもかけない豪華なおこぼれです。 そして、楽しんだであろう長いテーブルの宴のあとが月明かりの中、美しいシルエットとなり、それがまるで映画の1シーンのように記憶に残りました。その一行は騒がしくすることも無く、切り上げ方も鮮やかで、無駄の無いスマートな動きは今でも印象深い思い出になっています。

 

そんな元気な夏休みもすっかり卒業です。今は世の中の夏休みのざわめきに惑わされることも無く、夏の行事はお墓参りだけ。夫と二人静かに、穏やかに過ごします。たまに夏休み中の元気いっぱいの小学生の甥っ子たちが現れ、庭でジンギスカンを食べ、短い夏は過ぎていきます。

今回の篆刻は「蝉時雨」です。家の近所では2、3匹の蝉が鳴いているのが聴こえてきますが、なかなか降るような蝉の鳴き声を聴くことはありません。どこかに足を運んで、フル演奏の蝉時雨を体感したいものです。今月の額は水の中を涼しげに泳ぐ金魚が描かれた絵はがきに、「蝉時雨」を捺してみました。残暑厳しい本州の友人に、この葉書でお便りを届けることにしましょう。

ずいぶん久しぶりに育てた、朝顔の鉢を紹介させていただきます。まさに夏の風物詩朝顔ですが、七夕には日本最大、東京入谷の朝顔市がTVニュースでも流れます。花の中心が白く、ヒラヒラと透けるように薄い一枚の花びらがなんとも涼しげで、また蕾もこよりを巻いたようなスッキリとした風情は文句無く夏の花を思わせます。江戸時代から、狭い長屋の玄関先に一鉢の支柱につるを巻きつけ、こじんまりと収まる朝顔は庶民の楽しみになっていたようです。

朝顔は、今では小学1年生の夏休みの観察日記の定番です。そんな訳で25年前、1年生の息子に、種は1日水につけ丸いカーブの所に少し傷を付けると発芽しやすいことを教わりました。よその玄関先に教材用の朝顔鉢があると、1年生がいることを知り微笑ましく思います。我家の朝顔は今、毎朝数個の花を咲かせ楽しませてくれます。

 

では最後になりましたが、残暑お見舞い申し上げます。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

2010.8.23