錦秋のころ

9月下旬、数年振りに標高2078m大雪山赤岳の紅葉に抱かれようと登山靴の靴ひもをきりりと締めて登りだしたのですが、遠くに見える紅葉はぼんやりとしていてはっきりせず、どちらかと言うとまだ緑が鮮やかです。今年の厳しかった残暑にやはり紅葉は遅れているのかと思いながらも少しずつ登って行き、色づいた木々が近づいてくると赤く染まるはずのナナカマドの葉は一部茶色に枯れ、目が覚めるように赤くなるウラシマツツジは黒く変色し、すっかり山の紅葉に影を落としていました。期待していた美しい紅葉には出会えず、少し残念な登山となりました。例年なら、赤岳は這い松の緑と大きな岩間には深緑の苔が広がり、ナナカマドとウラシマツツジはたっぷりと茂って日本庭園のように美しく、頂上はゆったりと広く縦走の拠点となる360度の景観は素晴らしいものです。赤岳の登山口、標高1500mの銀泉台には全国の赤岳ファンが集まり心弾ませ登って行く山なのです。

今回の篆刻は「蘭飛馨」です。蘭馨(らんけい)を飛ばすと読み、蘭の花が香気をあたりに漂わせるという意味のようです。印材は2.5cm角の巴林石(ぱりんせき)に朱文で刻しました。蘭という言葉の響きはゴージャスで、また三文字それぞれが華やかに自己主張し、特に馨るという文字は左側いっぱいスペースを使い香りを振りまいているかのようになりました。そんな印を鳥獣戯画のはがきに捺してみました。マッチしているような、ミスマッチのような不思議な雰囲気になりました。


先日書店で、雑誌ミセス10月号の興味をそそられる特集に目がとまり、久しぶりに手が伸びました。その特集はもちろんじっくり読んでしあわせな妄想を楽しみ、それとは関係なくりんごを使ったお菓子のページに目がとまり、作ってみたくなりました。それは「タルトペイザンヌ」と言うタルトです。いつも私が作る簡単ケーキとは大違い。タルトの生地を3時間ねかせ、干し葡萄入りのりんごジャムを作り、クレーム・ダマンドと言う皮付きアーモンドパウダーで作る濃厚なクリームをタルトの上にのせて一度焼き、さらにその上にりんごジャムと千切りのりんごをたっぷりのせてもう一度焼き完成です。なかなか作りごたえのある時間になりました。



2012.10.18