季節を彩る、手作り和菓子。オトナ女子は、風情のある暮らしを!

桜の花が散り始めたのを見て、「シマッタ!」と思った。

そんなことは、桜が咲き始めたときからわかっていたことなのに。

やり残したことを諦められずに、最終的にジタバタしてしまう私なのだ。

 

なにがそんなに諦められなかったかというと「桜餅」である。 好きとか嫌いとかの範ちゅうを越え、桜の頃には「桜餅」を食べないと落ち着かない。 それも、スーパーのものや、チェーン店で量産されたものは、どうも買って食べる気がしない。

一昨年、駅の改札を出た所に出店があり、つい出来ごころで買ってしまった。 プラスチック容器に個装され、こじんまりときれいに作られた桜餅はどこか無機的で、薄っぺらな味がした。

今どき、「桜餅」一つに風情やらなんやらと、価値を付けて味わおうなどという、欲ばり、かつ風流な人間は、大正生まれのお婆さんと私ぐらいのものなのかもしれない。

私が子供の頃、我が家には明治生まれの伯母が居た。 彼女は生花と和菓子が大好きで、洋間の大きな花瓶には、常時、ユリやストックなどの大振りな花が活けられ、買い物の最後にはいつも街の和菓子屋さんに寄り、季節の和菓子を買って帰る。

春は濃い緑色のよもぎの入ったお餅で餡をくるんだ「草餅」で始まる。「草餅」を何度か楽しみ、お彼岸の「ぼた餅」、そして「道明寺の桜餅」、「長明寺の桜餅」と続き、桜の花が散り始めればすぐさま「柏餅」へと突入する。 「柏餅」のこし餡、つぶ餡、味噌餡を日替わりで堪能すると、黒(黒糖)と白(白砂糖)の「ちまき」が出現する。

ここに書いている和菓子が毎年必ず我が家では用意され、各種類を最低1個づつは食べるのだ。3月4月はとりわけ忙しく、「ちまき」を食べる頃には胃もたれがしていた。

そんな子供時代を過ごした私だから、今でも和菓子屋さんの前を通るときは、歩く速度を極力抑え、硝子ケースの中を「ジーッ」と見つめる。しかし、なかなかお店に入るきっかけが掴めない。

週に一度だけ仕事に通っている街の小さな和菓子屋さんも、入ってみたいと思いつつ、いつも素通りしているお店だった。 その日、好物の「みたらしだんご」が私を吸い寄せ、お店に入ることができた。

「みたらしだんご」の串に刺されたお餅の焦げ具合から、美味しさが伝わってきたのだ。 それよりも何よりも「桜餅!」、と探せば、餡をくるんだ皮がふんわりとして、こちらも美味しそうなのだ。

お店の奥様が「餡は77歳の主人が毎朝作っているの。材料はピンからキリまであるから、ちょっと高いかもしれないけど、スーパーで売られてるモノとは全然違うの、ヘルシーだしね!」と話してくださった。

生菓子なので今日食べる分しか購入できず、恐縮しながら、たった2個だけ買い、家に帰ってワクワクしながら包装を開けた。 すると、タレのたっぷりかかった「みたらしだんご」1個と「桜餅」1個が、コンパクトにうまいこと包まれていた。

私の目に間違いはなく、「みたらしだんご」はボリュームのあるお餅がしっかりと炙られ、透明感のあるタレは濃度も味もいいあんばいで、炙ったお餅の美味しさと調和していた。

そして目あての「桜餅」は、ふんわりしながらもコシのある皮が、美味しい餡をくるんでいて、手作りだからこその味わいだった。 どちらも想像通りの美味しさに大満足したのだが、お値段も「桜餅」162円、「みたらしだんご」は87円と感動的!

このお値段で手作りの作りたての美味しさと季節感を、きちんと届けてくれる、街の和菓子屋さんに脱帽しました!

桜の季節が終わっても、季節ごとに商店街の和菓子屋さんに立ち寄って、ささやかながら風情のある暮らしをしようと思っています。 ケーキ屋さんばかりが流行って、和菓子屋さんはひっそりと目立たない存在だけれど、是非とも頑張って欲しいものです。

皆さんも街の和菓子屋さんへ行ってみてはいかがでしょうか?

 

 

2014.4.21